コンテンツ

カテゴリー「KT88設計」の21件の記事

2016/06/14

KT88プッシュプルアンプ 構造実装設計(6)

 私はプリント基板設計CADにCadSoft Computer社のEAGLEを使用しています。今回のアンプ製作からMAC版に乗り換えました。慣れるととても使いやすく、安定して動作するソフトだと思います。



 下記はKT88電圧増幅段のアートワークを作成している時の画面です。
アートワークは結構楽しい作業です。なんというか、クロスワードパズルを解いているようなジグソーパズルをやっているような、そんな感じです。多くの方にチャレンジしてほしいと思います。




Eagle





 CADソフトが吐き出すファイル形式のままではPT板製作メーカへの発注はできません(Eagleに関しては、直接発注できるメーカーが欧州にあるみたいです)。業界標準のガーバーフォーマットに変換する必要があります。これはEagle上のdruプロセッサを使って行うことができます。しかし、druプロセッサ用としてEagleに標準で用意されているファイルを使うと半田面と部品面が逆さまになってしまいます。PT基板メーカーが用意しているdruファイルをダウンロードして使うのがよいと思います。


 このように、CADソフト上で描いた図面とガーバーの画面とが食い違ってくることがあります。設計作業の最終フェーズで、「変換されたガーバーデータを直接確認する」ということが一般的に行われています。その際に使用するソフトがガーバービュアーです。



 MACで使えるガーバービュアーを探したところ、Gerbvというオープンソースのソフトが見つかり導入することにしました。しかし、導入のハードルは結構高く、webでの情報にずいぶん助けられました。詳細は省きますが、次の5ステップが必要になります。


1) Javaの導入
2) Command Line Toolsの導入
3) Homebrewの導入
4) X11(XQuartz)の導入
5) gerbvの導入


下記は、Gerbvでアンプ電圧増幅段基板のガーバーデータを開いたところです。Eagle上の画面とはずいぶん違った印象を受けると思います。




Gerbv



2016/06/10

KT88プッシュプルアンプ 構造実装設計(5)

下記は、Eagleに入力したアンプ電圧増幅段の回路図です。NFBのβ回路、トランス出力の位相補償回路、ローカルの電源安定化回路等も一緒に乗っています。最大出力時の振幅が大きいので、一部抵抗には1/2W型を使用しています




Amp_c_s

Amp_c2_s



下記は部品面のアートワーク図面です。部品面の大部分はグランドになっています。できるだけ共通インピーダンスの影響を避けるように引いたつもりです。量産性など関係ないのですが、ダイオードや電解コンデンサ等の極性部品の方向は統一するようにしました。




Amp_b




下記は半田面のアートワーク図面です。半田面は信号の配線に使っています。入力のハイパスフィルタに使うコンデンサが決まっていなかったので、色々なサイズが使えるようにランドを複数設けました。




Amp_h





下記は基板図です。
サイズは130mmX100mmです。
出力トランス配線用にΦ40の丸穴を設けました。また。ケース取り付けの寸法誤差を吸収する為、基板取り付け穴は長穴としています。




Amp




2016/06/07

KT88プッシュプルアンプ 構造実装設計(4)

下記は、Eagleに入力した±15V安定化回路、±75V安定化回路の回路図です。可変抵抗で出力電圧を可変できるようにしてありますが、調整後は固定抵抗に置き換える予定です。LM317とLM337は負荷電流が3.5mA以上ないと安定に動作しないとデータシートに記されていますので、出力電圧調整回路の抵抗(R3〜R6)に食わせるようにしています。



Reg_c_s


下記は部品面のアートワーク図面です。端子台下にパターンを通してしまったため(設計ミス)、組み立ての際には絶縁シートを敷くことになってしまいました。




Reg_b




下記は半田面のアートワーク図面です。±15V安定化回路に使用するFETはケースにねじ止めする予定なので、ドライバーが通る丸穴を設けてあります。




Reg_h





下記は基板図です。100mm X 60mmのサイズで、四隅に設けた取り付け穴以外に2つの丸穴(Φ10)があります。




Reg




2016/06/03

KT88プッシュプルアンプ 構造実装設計(3)

下記は、Eagleに入力した整流回路の回路図です。抵抗はコンデンサの電荷放電用です。±75Vでは実装しますが、+465Vには別途放電回路が設けてありますので実装しません。また、CN5は±75Vでは実装しますが、+465Vでは実装しません。




Rec_c_s



下記は部品面のアートワーク図面です。ダイオードはTO220タイプで、放熱のためシャーシにねじ止めする場合は基板裏面に取り付けます。そのため、基板表面に実装する場合は裏返して取り付けることになります。




Rec_b




下記は半田面のアートワーク図面です。コンデンサはスナップインタイプとしました。パターンギャップは3.2mm以上取っています。




Rec_h




下記は基板図です。90mm X 75mmのサイズで、四隅に取り付け用の穴を設けてあります。



Rec



2016/05/27

KT88プッシュプルアンプ 構造実装設計(2)

アンプ部にはタカチのFCS型フリーサイズボックスを使用しました。このケースはサイドパネルにレール溝が切ってあって、ここにシャーシ(アルミ板)を取り付けることで外部にネジが出ないようにできます。注文した部材は下記です



Photo




下記は実装検討中の図面です。





Photo_2


真空管を落とし込む構造にしようと考えたのですが、そのためには上面に大きな丸穴を開ける必要があります。私が開けられる最大の丸穴は30mmなので、今回は穴あけ加工をマルツ電波に依頼しました。下記は依頼図面です。



Photo_3


Photo_4


上記の寸法ではスピーカー端子が入りませんでした。回り止め部分の寸法をもう少し大きくした方が良いみたいです。



梱包をといて内容物の写真を撮りました。




Photo_5




2016/05/24

KT88プッシュプルアンプ 構造実装設計

電源部のケースはタカチのFC型コントロールボックスを使用しました。型格はFC10−35−30 BBで、寸法は100.4mmX350mmX300mmとなっています。

下記は実装検討中の図面です。



Photo


底面と背面の寸法図を下記に掲載します。



Photo_2

Photo_3


梱包をといて内容物の写真を撮りました。



Photo_4



2016/05/20

KT88プッシュプルアンプ 電源の設計(4)

(Ⅴ)±75V電源と+55V電源
 プラス側にはLM317、マイナス側にはLM337を使用します。使用するコンデンサは100V耐圧です。
以下に整流回路と安定化回路の回路図を掲載します。


75v



75v_2



55v_2


(Ⅵ)±15V電源
maida regulatorを使用します。
マイナス電源は電流の向きが逆になり、3端子レギュレータがLM317からLM337に、FETがNチャンネルからPチャンネルになりますが動作原理はプラス電源と同じです。
シミュレーションから得られた値をもとに各素子の電力損失を見積もります。



15v



FETの損失は、プラス側が4.8Wでマイナス側が3.7Wと計算されました。FETは電源ケースの側板に取付けることとします。

以下に、安定化回路の回路図を掲載します。



15v_2




参考文献:
  佐藤荘太郎、汎用3端子レギュレータLM317を使って管球アンプ用高圧定電圧電源を作る、アイエー出版「ラジオ技術」、2007年6月号、p.57−62




2016/05/17

KT88プッシュプルアンプ 電源の設計(3)

(Ⅳ)B電源
 EL84アンプと同様にmaida regulatorを使用します。
シミュレーションから得られた値をもとに各素子の電力損失を見積もります。


Kt88_b


FET(SCT2450KE)の損失は、アイドリング時5W、最大出力時7.5Wと計算されました。次に熱計算を行い安全性を確認します。FETは電源ケースの底板に取付けることとします。





Kt88



電源ケースの底板には2個のFETを取り付けますから実際のジャンクション温度はもう少し高くなると予想されますが、それでも十分なマージンを持っていると言えます。

以下に、B電源の整流回路と安定化回路、タイマー回路の回路図を掲載します。




Power_b01_2

Power_b02



参考文献:
  佐藤荘太郎、汎用3端子レギュレータLM317を使って管球アンプ用高圧定電圧電源を作る、アイエー出版「ラジオ技術」、2007年6月号、p.57−62


2016/05/13

KT88プッシュプルアンプ 電源の設計(2)

(Ⅱ)必要電流の見積もり
まずB電源に必要な電流を見積もります。二通りで考えてみます。


(1)動作例から計算する
データシートに掲載されているUL固定バイアス、電源電圧460Vの動作例を参考にします。最大出力が70Wと少し大きく見積もられていますが、この時のプレート電流+スクリーン電流は、KT88一本当たり140mAと記載されています。従って、ステレオの片チャンネルで280mAが電源から供給する電流となります。

(2)Ep−Ip曲線から計算する
電力増幅段の設計でロードラインを引き最大出力を計算しました。その値は65.9Wです。この値は、スピーカへ送られる電力と出力トランスの電力ロスとの和であると考えられます。電源電圧が465Vですから、電流は65.9W/465V=142mAとなります。アイドリング電流は、プレート電流とスクリーン電流を合わせ65mA×2=130mAなので、電源から供給する片チャンネルの電流は142mA+130mA=272mAとなります。
 最大出力時のプレート電流はアイドリング時からそれほど増加しませんが、スクリーン電流はかなり増加します。スクリーン電流の増加分を考えると、電源電流は272mAより大きくなります。


両チャンネルとも最大出力というのはプロ用機器でもない限り有りえません。家庭用で使うならば、片チャンネルは最大出力、もう片チャンネルはアイドリング状態で電源電流を計算するのが良いと思います。参考文献にも同様のことが書かれています。
以上の考察から、アンプに必要なB電源の電流は、280mA+130mA=410mAとします。




次に電圧増幅段に必要な電流を見積もります。

(1)+75V
 LME49810  :   11mA  X 4 = 44mA

(2)-75V
 LME49810  :   13mA  X 4 = 52mA

(3)+15V                  
  OPA627    :   7 mA  X 2 = 14  mA
  OPA604    :   5.3mA X 4 = 21.2mA
  AD797     :   8.2mA X 4 = 32.8mA
  BIAS      :   5.3mA X 4 = 21.2mA
---------------------------------------
                            89.2mA

(4)-15V                  
  OPA627    :   7 mA  X 2 = 14  mA
  OPA604    :   5.3mA X 4 = 21.2mA
  AD797     :   8.2mA X 4 = 32.8mA
---------------------------------------
                            68  mA


                      

ヒータは、KT88一本で6.3V1.6Aとなっています。



(Ⅲ)トランス
 トランスは、EL84アンプと同じ株式会社フェニックスのRコアトランスを使用しました。
製作したトランスの仕様は下記の通りです。求めた必要電流より余裕をもたせました。


Kt88



 B電源を整流回路を含めシミュレーションしました。



Power01


Power02



 整流後の電圧ですが、負荷260mAで510V、負荷410mAで497Vとなりました。また、トランスの電流は、負荷260mAで581mArms、負荷410mAで850mArmsと仕様の範囲内に収まると値となっています。


電圧増幅段用の電源をシミュレーションした結果は下記です。


Power03


Power04


 整流後の電圧は、プラス側が+86.3V、マイナス側が-86.7Vとなりました。トランス出力電流は、負荷の大きいプラス側で294mArmsとなり仕様の範囲内であることが確認できました。



参考文献:
  黒川達夫、現代真空管アンプ25選、誠文堂新光社、p.120−121



2016/05/10

KT88プッシュプルアンプ 電源の設計

(Ⅰ)全体構成


Photo


 B電源とヒーター電源は左右チャンネル別々になっています。オペアンプ用の±15Vと±75V、B電源バイアス用の+55Vは左右共通です。整流回路と安定化回路を別基板にしたため、合計7枚のPT基板を一つの筐体に収めることとなりました。+465V安定化基板はEL84アンプで使用したものを流用しています。その他の基板は新作です。


 アンプ部と電源部の接続にはEL84アンプと同じコネクタを使いたかったのですが、アンプ部のケース寸法の関係で取付きません。止む無くB電源とオペアンプ用電源を分けることにしたのですが、両チャンネルで6個ものコネクタを使用することになりコスト高となってしまいました。コネクタは、B電源に日本航空電子のN/MS型、ヒータ電源とオペアンプ電源に七星科学研究所のNJW型を使いました。


 EL84アンプでは、電源切断時にスピーカから軽いポップ音が聞こえていました。これを防ぐため、B電源に電源スイッチと連動した電荷ディスチャージ回路を設けています。抵抗には25W1KΩのメタルクラッドを使いました。この抵抗は、電源切断時にコンデンサの電荷を熱として消費します。熱容量が大きいセメント抵抗でもOKだと思います。


 トランス一次側のヒューズには日本製線株式会社のFSL型(タイムラグ型)10Aを使いました。基板間の接続にはオムロンの端子台を使っています。デバッグ時には基板の取り外しを繰り返しますから端子台は便利なのですが、これも数が多いとコスト高になってしまいます。