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カテゴリー「EL84構想」の2件の記事

2015/09/05

EL84ppアンプ 構想と仕様(2)

今日はもう少し細かい所を決めていきたいと思います。

(1)電力増幅段
 ダンピングファクタを大きく取りたいならば3極管接続になりますが、出力15Wが目標ですからUL接続を選択することにしました。出力トランスはノグチトランスのPMF−28P−8Kです。もちろん、SGタップ付きです。この出力トランスですが、2001年の資料には¥6,800とあります。今は¥11,960ですが、このコアサイズでこの価格というのは良心的と言えます。

(2)電圧増幅段
 EL84はグリッド入力10Vrmsで最大出力が得られますので、オペアンプでも十分ドライブ可能です。高級なDACやCDプレイヤーにもオペアンプが採用されており、音質の良いオペアンプはどれかというような議論も盛んです。今回は、オペアンプを使って電圧増幅段を構成します。
 下の写真は使用を検討しているオペアンプです。OPA604はプラス・マイナス合わせた電源電圧が48Vと高いのが特徴です。真空管ハイブリッドアンプで使われているのをよく見かけます。OPA123は安価ですが高音質と評判のオペアンプです。OPA627は高級アンプに使われていたそうですが、少し高価です。気にしていませんでしたが、全てバーブラウン(今はTI)ですね。

Opa604_01_4 Opa134_01_4 Opa627_01_3
    

(3)ゲイン配分
 5極管接続ではグリッド入力が10Vrmsで最大出力17Wが得られます。4Ω負荷で計算すると出力電圧は8.2Vrmsになりますから、最終段のゲインは−1.7dBです。
 UL接続は一種の負帰還であるという考えがあり、参考文献には、負帰還量は−3.2dBであることが示されています。
 先輩諸氏の過去の製作記事等から、5以上のダンピングファクタを得るには-10dB以上のNFBが必要だと推測されます。本機では−12dBとします。
 NFBをかけた後の仕上りゲインを20dBとしていますので、電圧増幅段には(20+12+3.2+1.7)=36.9dBのゲインが必要と計算されます。

(4)電源回路
 回路規模は大きくなってしまいますが、オペアンプ用の電源だけでなくB電源も安定化します。適当なトランスが既製品に無いので、希望する仕様で巻いてもらおうと思います。株式会社フェニックスのRコアトランスを使うことにします。

(5)実装構造
 Rコアトランスは正直言って鑑賞に堪えない?と思いますので、表に出さずケースの中に実装することにします。アンプ全体を一つのケースに収めるのではなく、電源部とアンプ部は別ケースにするつもりです。
 今回のアンプは、電源部、アンプ部ともPT基板を使って配線します。半田付けの上手い下手に関わらず誰が作っても同じ物ができますから、特性の再現性がよく品質的にも安定するからです。


参考文献:
  アイエー出版「ラジオ技術2009年11月号」 

2015/09/02

EL84ppアンプ 構想と仕様

 ブログで発表する第1作目です。
張り切って記事を書いていきたいと思います。

 アンプ製作は、まず仕様を決めてから出力段に使用する真空管を選ぶ、というのが順序と思いますが今回はEL84(6BQ5)を使います。理由は単純で、手持ちストックがあったからです。いつか使おうと思って秋葉原や通販で真空管を購入しそのままになっている方、多いのではないでしょうか。

 EL84はオランダのフィリップス社が開発したMT型5極管です。EL84はヨーロッパの真空管名称で、”E”はヒータ電圧が6.3Vであることを、”L”は電力増幅用の4極管、ビーム4極管、5極管であることを示しています。日本でも、同一特性管を松下、東芝、NECなどが6BQ5として販売しました。現在でも、JJ ELECTRONICやSOVTEK,ELECTRO HARMONIXで生産販売されており、ペアチューブで¥3k前後と比較的安価に入手可能です。松下や東芝、NECの物も、探せばペアチューブ¥10k前後で入手できるようです。

El84_03

 EL84の特徴は、何と言っても感度が高く小振幅でドライブできることです。そのため、電圧増幅段の設計自由度が高く、所謂ハイブリッド型のアンプも容易に製作可能となります。一方で、プレート電圧の最大値が300Vでプレート損失12Wという制約がありますから、どのような動作をさせるか慎重にならざるを得ません。また、スクリーンの許容損失が小さいことも気にかけての設計となります。

今回のアンプはプッシュプル動作の出力段のみを真空管にして他は全て半導体を使うという構成で進めることにします。動作ポイントや各部の損失についても注意深く確認したいと考えています。


今回製作するアンプの目標仕様です。
   最大出力      : 15W
   歪率         : 1%以下(10W出力時)
   増幅度        : 20dB(10倍)
   周波数特性     : 10〜100KHz(−3dB)
   ダンピングファクタ : 5以上
   残留雑音      : 0.1mV以下
ボサノバやジャズボーカル、70年代の洋楽が楽しく聴けるような、そんなアンプを目指します。


参考文献:
  誠文堂新光社「世界の真空管カタログ」