EL84ppアンプ 組み立て(6)
設計時点でACバランス回路を設けていたのですが、歪率計をつないで測定してみると、ACバランス無しの時とほとんど同じでした。ペアチューブを使えばACバランスは必要ないようです。
残る調整はバイアス調整です。片チャンネル毎に行います。テスターを2台使い、プッシュプルの上下の値を同時に見ていきます。調整値はカソード抵抗10Ωの両端で160mVです。事前に半固定抵抗をバイアス電流が小さくなる方に回しきってあるので、最初は160mVより小さな値が出ます。半固定抵抗を回して調整しますが、時間とともに変動しますから安定するまで何度も微調整を行います。真空管によっては、値が数%フラフラするものがあります。気にすることはないのですが、安定な方が良いですよね。フィリップスのEL84は、年代が古いにも関わらずピタッと安定しました。気持ち良いです。
バイアス調整が終われば、もう音が出る状態になっています。が、ここから測定を行って構想通りの性能が得られているかを確認していきます。事前に試作を行ってNFB量や位相補償の値を決めていますから、その確認という意味合いもあります。
下記の項目を、NFBの有りと無しでそれぞれ測定します。
(1)入出力特性
クリッピンングポイントの確認とその近傍におけるリニアリティの確認が主な目的です。歪率の方を優先し、アバウトな測定になることが多いと思います。
(2)周波数特性
デジタルマルチメータの周波数限界が300KHz程度なので、以前は高い周波数まで測定ができませんでした。今はAnalog Discoveryがあるので、高価なネットワークアナライザがなくても数MHzまでの周波数特性を簡単に測定することができます。
(3)歪率特性
以前は自作の歪率計を使っていましたが、レベル調整が面倒で時間もかかるので、今はパナソニックのVP−7725を使っています。もちろん中古です。高調波のみを取り扱うTHDとノイズ成分も含むTHD+Nとをスイッチ一つで切り替えて測定できるので大変便利です。
(4)入出力応答特性
矩形波を入力して低域のザグや高域のオーバーシュートを観測し、動作の安定性を確認します。
(5)ダンピングファクタ
負荷の値(スピーカのインピーダンス)をアンプの出力インピーダンスで割った値です。私はオンオフ法で測定しています。