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カテゴリー「電源ユニットの製作」の8件の記事

2017/09/22

真空管アンプ電源
 考察

はじめに製作した電源ユニットは、すべての安定化回路を3端子レギュレータで構成していました。今回製作した電源ユニットは、オペアンプを使った実験室でも使用できる?高性能安定化回路です。音質の差はあるのでしょうか。残念ながら、はじめに製作した電源ユニットから部品取りしてしまったので直接の比較はできません。記憶が頼りです。

ヒアリング結果ですが、劇的な変化があるようには感じられませんでした。当然かもしれません。それでも、少し静かになったような低域がより強く押し出されてくるような、そんな印象を受けました。



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       富山クラフトオーディオの視聴会での1コマ



真空管アンプに安定化電源は必要なのでしょうか。安定化電源のメリットを考えてみます。

① 負荷が変動しても電源電圧が変化しない
   =電源の出力インピーダンスが低い

② 電源由来のノイズの影響を受けない
   =リップル除去率が高い

③ 商用電源の電圧が変動しても電源電圧が変化しない

④ アンプ回路が必要とする電源電圧を設定できる


①について考えてみます。シミュレーションの結果から、可聴帯域内の電源出力インピーダンスは1Ω以下です。真空管アンプの電源電流変化を200mAとするならば、電源の出力電圧変動は高々0.2Vです。460Vの電源電圧に対してわずか0.04%しか変動しないということになります。
一方、チョークコイルとコンデンサでπ型フィルタを構成した場合、コンデンサ容量が47μFぐらいしかないと20Hzの出力インピーダンスは100Ωを超えます。安定化電源を採用するメリットはかなりあると思います。


②についてです。安定化回路の設計上、電源リップルの下に出力電圧を設定しますから、電源ラインに直接乗ってくる基本リップルは無くなります。整流ダイオードが発生する高調波は厄介な代物ですが、安定化電源ではそれなりに除去可能です。誘導によるものが多少残ります。
しかし、真空管回路はそれほど高SNに仕立てられているわけではありませんから、半導体を使った簡単なリップルフィルタとの差を聞き取るのは難しいと思います。


③についてですが、安定化電源は商用電源の電圧変動に対して有効に機能します。しかし、一般的に真空管アンプは商用電源の”質”に影響されやすいということが言えます。安定化電源を用いても完璧ではありません。高額な出費になりますが、AC安定化電源(商品名はクリーン電源)が一つの解決策になるかもしれません。


④は、既存の電源トランス巻線の束縛から逃れられるという意味で、アンプビルダーにとってありがたい特徴になると思います。



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       実験している様子



デメリットですが、オーディオアンプの電源ラインにエミッタ接地増幅器(またはエミッタフォロア)が接続されていることになりますから、音質に関し電源回路に使っている半導体の影響を受けるのは確かです。さらに、周波数の高い領域では半導体だけでなく出力コンデンサからも電流供給が行われるため、コンデンサの音質への影響も避けられません。電源もアンプの一部として機能しているので、十分な検討が必要ということになります。


電源の物理的性能がアンプの音質にどう影響するかよく分からないまま、悪いより良いにこしたことはないと様々な施作を打っているのが実態です。ベテランのアンプビルダーが、リップル除去に簡単なπ型フィルタしか使わなかったり、電源に使用するコンデンサを吟味したり、ダイオードの代わりに整流管を使ったりして経験をもとに物理特性より音質を重視した設計をするのは趣味の世界では”あり”と思います。



電源回路の設計ですが、シミュレーションツールによる解析が有効です。無茶をしても何も壊れませんし、実機での再現性が高いことも魅力です。電源トランスや整流回路の解析を行うだけで設計の精度がぐーんと上がること請け合いです。



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       シミュレーション画面






2017/09/15

真空管アンプ電源
 ケースへの組付け その2

背面パネルにコネクタ類を取り付けます。あらかじめ線材を半田付けしておきます。



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±15V安定化電源基板を取り付けます。



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±15V安定化電源基板の上に±78V安定化電源基板を取り付けます。基板を取り付ける毎に動作を確認します。



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+460V安定化電源基板を取り付けます。タイマー動作も確認します。



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組み上がりました。



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真上から見たところです。



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2017/09/09

真空管アンプ電源
 ケースへの組付け

底板と3mm厚のアルミ板を貼り合わせ、プリント基板固定用のスタッドを立てます。



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底板に足を取り付けます。



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電源トランスを取り付けます。



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整流基板を取り付け配線します。



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+460V安定化電のFETをねじ止めします。ゲートには発振防止用の抵抗が入っています。



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±15Vと±78V安定化電源のトランジスタとFETをねじ止めします。



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2017/09/01

真空管アンプ電源
 プリント基板の組立

下の写真は、+460V安定化電源用のプリント基板です。



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下の写真は、±15Vと±78V安定化電源用のプリント基板です。



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いつものように、回路図と部品番号を確認しながら半田付け作業を進めます。



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下の写真は、半田付け作業が終了した±15V安定化電源基板です。



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下の写真は、半田付け作業が終了した±78V安定化電源基板です。



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下の写真は、半田付け作業が終了した+460V安定化電源基板です。



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2017/08/26

真空管アンプ電源
 使用部品

下の写真は、±15V安定化電源に使用する部品です。



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下の写真は、±78V安定化電源に使用する部品です。



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下の写真は、+460V安定化電源に使用する部品です。



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タカチからアルミインシュレーターフットAFS/AFMシリーズが発売されています。新し物好きの私は早速飛びつきました。ケースの色が黒なのでブラックタイプのAFS44−18Bを注文です。



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径が55mmになると値段が倍近くに跳ね上がるので44mmを採用しました。ずしりと重いのですが、どのくらいのアイソレーション効果があるのかは不明です。



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2017/08/18

真空管アンプ電源
 板金加工その2

今回は、パワー半導体と足の取り付けのためにタップを切りました。


下の写真は、私が持っているハンドタップです。



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タップは下穴を開けたあと、先タップ→中タップ→仕上げタップの順に切っていくと解説されています(上写真中央)。しかし、ネジがM3やM4だったりすると中タップ一本で切ることが多いです(上写真左)。今回は、一本で組みタップの機能をもっているというジェットタップを使ってみました(上写真右)。

下の写真は、中タップとジェットタップの先端を拡大したものです。



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中タップ


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ジェットタップ



下の写真はタップフォルダを使って作業しているところです。
タップ作業が終わったら、ネジがちゃんと切れているかどうかネジ穴に油を注いで実際のボルトを回し込んでいきます。これを何回か繰り返すことで切子を取り除くこともできます。



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板金加工が終わったら洗剤をつけて洗い、油分を取り除きます。下の写真は、水洗いの終わった部材を乾燥しているところです。



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下の写真は、穴あけ作業が全て終わったケース部材です。



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下の写真は、補強用の3mm厚アルミ板とケース底板です。



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2017/08/11

真空管アンプ電源
 板金加工

使用したケースはタカチのFC型コントロールボックスで、350mmx250mmx100mmのFC10-35-25BBです。



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下図は配置検討図です。
電源トランスを中央に配置したため、整流基板と制御基板が左右泣き別れになりました。
底板に300mmX200mmで3mm厚のアルミ板を貼り付け強度アップを図ります。



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下の写真は補強用の3mm厚アルミ板の罫書き作業を行っているところです。



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全ての罫書き作業が終わりました。図面を見ながら間違いがないかチェックしていきます。



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下の写真はいつもの板金作業用ワークベンチです。1階の土間でやっています。



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2017/08/04

真空管アンプ電源
 プリント基板の設計

下の写真はEagleで基板設計をしているところです。ディスプレイ2面を使って作業しています。回路図が頭の中に入っていれば1面でも問題ないです。しかし、回路図とボード設計を行ったりきたりすることもあるので、できれば2面欲しいところです。部品の検索とかを考えると3面が理想です。



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下図は±15Vと±78Vの共通回路図です。共通の基板の上に2種類の電源を構成するため、あっちこっちにジャンパー抵抗が入っています。



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下図はアートワーク図面です。赤が部品面で青が半田面になります。
左に入力がある時には右に出力をとるという配置にすると思います。ここでは電流ルートが最短になるよう、出力を左下に配置して配線しました。



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下図は+460Vの回路図です。酸化金属皮膜抵抗を使いたくなかったので、基準電圧のところに0.5W300KΩを6本使っています。



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下図はアートワーク図面です。太い線が少なくて、電源らしかからぬ基板になりました。浮動増幅器型定電圧電源の特徴かもしれません。高電圧部分が少なくて配線しやすかったです。



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