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ALHM6702を使って発振を経験したという記事は川名幸男氏が書いておられ、2014年のトランジスタ技術3月号の157ページから158ページにその詳細が記述されています。ALHM6702の反転増幅器2段で30dB30MHzのアンプを製作しているのですが、私と同じようにDip変換基板を用いて盛大に発振したとあります。氏は実装をやり直して解決したようです。
私はどうしたかですが、たまたま手持ち部品の中にAD811というALHM6702より帯域の狭い電流帰還型オペアンプを見つけ使ってみることにしました。帯域幅はALHM6702の720MHz(ゲイン2倍)に対し120MHz(ゲイン2倍)で、パッケージは8ピンDipです。
安定化電源の設計では、出力コンデンサの直流抵抗が系の安定性にとって重要なファクターであることが分かりました。直流抵抗は技術雑誌に載っている値を参考にすれば事足りることがほとんですが、自分の選択した部品の特性がどうなっているのか分からないのは少し不安になります。また、”部品の特性と音質との関係”がどうなのかということも気になります。
一般的に、受動部品の特性を測定するにはインピーダンス測定器を用います。インピーダンスとは、抵抗とキャパシタンス、インダクタンスの各成分が複素平面上で形成するベクトル量です。従って、インピーダンスは周波数によって変化する値となります。
電気系の学生はブリッジでインピーダンス測定する実験を必ずやるはずです。でも、今の学生は手を動かし感覚を研ぎ澄ませて電気と向き合うなんてことはやらないのかもしれませんね。
前置きが長くなりましたが、アナログディスカバリーを用いたインピーダンス測定器を製作しましたので紹介したいと思います。
アナログディスカバリーと組み合わせて行うインピーダンス測定はI-V法と呼ばれているものです。原理は下記の通りです。
設計した回路を製作し所望の特性が出ているか確認しました。
以前はホーロー抵抗やセメント抵抗をつなぎ変えて測定していました。今回はアルミケースに抵抗やスイッチを組み込んだ簡易的な治具を製作しています。
下図はロードレギュレーションの測定回路です。
下図は過渡応答の測定回路です。
FETは手持ちのものを使いました。2SK3564は、900V3AのNチャネルMOSFETです。2SJ407は、−200V−5AのPチャネルMOSFETです。出力インピーダンスを620Ωに調整した発振器を直付してゲートを駆動しています。
下の写真は製作した治具になります。
少し面倒臭いですが、測定項目に応じて内部の配線を変更します。
今回の実験のためということではないのですが、アナログオシロを導入しました。
Tektronixの2465Bです。ヤフオクで、出品者がコンデンサを新品に取り換えるなどして整備したものが出ていて、幸運にも相場の半値ほどで落札できました。外装はピカピカでランプも全て点灯しますし画面も明るく、機能的な問題は出ていません。ただ、年代物なので時間軸と電圧軸の精度には難があります。
でも、アナログオシロはよいですね。電子工作をしている、という喜びがじわじわとわいてきます。
過渡応答の測定にはケースレーの発振器3390を使用しました。下の写真は出力インピーダンスを620Ωに調整しているところです。
下の写真は実験環境?の全景です。
参考文献:
遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.86−157
本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90
(Ⅰ)調整
(ⅰ) 電源部
一次側の配線と二次側の整流回路までの配線を済ませてAC100Vを接続し、整流後の電圧が電源トランスの定格電圧の1.4倍前後が出ていることを確認します。
次に安定化電源を一つずつ確認していきます。所定の電圧になるように半固定抵抗を調整しますが、私はデバッグがすべて終わった時点で固定抵抗に置き換えることにしています。今回、電源部に使っている半固定抵抗7個のうち1個にトラブルが発生しびっくりしました。半固定抵抗は機械的な接点がありますから、製造時点で問題なくても流通や保管で不具合品に変化する可能性も有り厄介な代物です。
写真に写っているデジタルマルチメーターはキーサイト・テクノロジー社(旧ヒューレッドパッカード社)の34461Aです。
これまでケースレー社(現在はテクトロニクス社に吸収されている)の2100を使っていたのですが、電源を入れると10分間ほどエラー表示が出て測定できないというトラブルが発生しました。修理費用をホームページで確認したところ、故障内容に関わらず一律八万数千円で、補償期間5年をすぎている個体はプラスアルファが請求されるとのことでした。送料や税金を加えると十万円を越える可能性もあります。因みに、この測定器は8年前に当時のケースレー日本法人から直接購入したものです。
資産管理している組織で税金のメリットがあるのなら修理しますが、個人の場合は購入金額を上回る修理費用を今更支払うのは馬鹿馬鹿しいと思いますよね。ということで、34461Aの購入に至りました。オシロのテクトロ、マルチメータのHPというのは測定器界のブランドです。手に入れられてとても嬉しいです。
(ⅱ) アンプ部
電源を入れる前に、電源とグランド間にテスターを当て異常な抵抗値を示していないかを確認します。電源を入れたならば、素早く各部の電圧を確認します。半固定抵抗を回してバイアス電圧が変化するかを確認し、プレート電流が小さくなる方に半固定抵抗を回しておきます。
次に、発振器を入力につなぎ電圧増幅段の動作を確認します。ゲインが計算通りか、周波数特性がシミュレーション通りかまでチェックできれば完璧です。
プリント基板をアンプケースに組み付け配線を済ませます。テスターを2本の真空管のカソード抵抗それぞれに接続し、電源を入れてバイアス電流調整を行います。今回は少し多めで65mAにしました。電源を投入して10分ぐらいで安定します。
(Ⅱ)測定(NFBなし)
NFBなしの状態で一通りの測定を行います。測定項目は、歪率特性、周波数特性、入出力特性、ダンピングファクタ等です。
下の写真は試作機の動作確認をしている様子です。
写真に写っている測定機器は下記の通りです。
オシロスコープ : TEKTRONIX TDS2012B
マルチメータ : KEITHLEY 2100
歪率計 : Panasonic VP-7725B
電源 : TIC SPF2D-48-0.5
高砂製作所 EX-375U2
Agilent U8001A
アッテネータ : 自作
ダミーロード : 自作
オシロとマルチメータ以外は中古か自作品です。トランスや基板が載っているシャーシは、以前製作した真空管アンプから部品取りした残骸を有効利用しています。穴がいっぱい空いていて重宝しています。
上の写真には写っていませんが、是非紹介したい測定器がDigilent社が販売しているAnalog Discoveryです。
秋月で購入すると、本体が36,000円でBNCコネクタボードが2,140円です。内容については、トランジスタ技術2015年4月号に詳しい記事が載っています。私が特に重宝しているのは、ネットワークアナライザ機能です。帯域は1Hz〜10MHzしかないのでRF(Radio Frequency)用途では全く役に立ちませんが、AF(Audio Frequency)用途
にはジャスピンです。測定結果をExcel上で演算処理してダンピングファクタの周波数特性を得る、ということも簡単にできます。内蔵されているADコンバータですが、サンプリング速度は100Mと大したことはありません。しかし、14ビットの縦スケールを持っていますので、一般的なディジタルオシロスコープ(8bit)より縦軸分解能の高い波形を得ることができます。
下記はPC画面です。発振器の出力を直接オシロに入力しています。
参考文献:
志田晟、CQ出版「トランジスタ技術」、2015年4月号、p.51−61
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