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電圧増幅段に必要な電圧は、DC±15VとDC±70V2種類です。
DC±15VとDC±70Vに用いるトランスはフェニックスに仕様を出して作ってもらいました。巻線はAC14V/0V/AC14VとAC60V/0V/AC60Vで、容量はそれぞれ0.2Aです。
下の写真は納入されたトランスを測定しているところです。
LTC6090の閉ループ特性をもとにカットオフ周波数を決める方法ではうまくいかないことが分かりました。原因は、LTC6090のスルーレート特性が歪を伴う独特なものである事に加え、ゲインを大きくしたためオペアンプに対する負帰還量が減少し歪を改善させることができなかった事にあります。
過渡応答波形を確認しました。
下図は、再掲載ですが過渡応答測定治具の回路です。
115mAの矩形電流を負荷として加えています。
下の写真は過渡応答波形です。
波形の立ち上がり直後から約500KHzの細かな振動が観測されました。
これは発振しているのではないかとちょっと慌てましたが、±78V電源で経験したLC共振と現象が似ていることに気づきました。
この現象の原因は何か少し考えてみました。
+460V電源は、オペアンプのマイナス端子側がグランドに接続されていて、プラス端子側はグランドではなく出力電圧側を基準とした電圧に接続されています。過渡的な電流変化によって出力に生じたノイズ成分は抵抗で分圧されてオペアンプのプラス端子に加わり、それが増幅され今回の現象になったのではないかと推測しました。
これを確認するため、下図に示す位置にノイズバイパス用のコンデンサを入れてみました。
330pFを入れた時の過渡応答波形が下の写真になります。
細かな振動は無くなっています。
コンデンサを挿入することで電源のクローズループゲインがどうなるかシミュレーションしてみました。下図がシミュレーション回路になります。
コンデンサの値を1nF、100pF、330pFと変化させてシミュレーションした結果が下図になります。
ゲインが0dBになる周波数と位相余裕は以下の通りです。
1nF : 28.6KHz 85.9deg
100pF : 27.7KHz 71.5deg
330pF : 23.4KHz 49.5deg
330pFを入れると過渡応答の波形は綺麗になるものの、電源全体の位相余裕は大きく減少することがわかります。この場所にコンデンサを入れるのは適当でないようです。
ロードレギュレーションですが、電流値は45KΩ負荷と45kΩ//4kΩ負荷の二通りで確認しました。
45kΩ(10.2mA)
電源基板出力 460.035V
治具入力 460.035V
45KΩ//4KΩ(125.2mA)
電源基板出力 460.033V
治具入力 460.026V
治具までの抵抗分は±78V電源で測定した時と同じで75mΩでした。電源本体は、115mAの電流変化で2mV電圧が低下しています。電圧が低下しているのは事実ですが、マルチメータの精度を考えると電源の出力インピーダンスはこうだと言える数字ではありません。
参考文献:
遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.158−173
本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90
(4)タイマー回路
555をシリーズ接続しています。動作をシミュレーションで確認しました。
上記の回路定数でTimerAの動作時間は28.9秒、TimerBの動作時間は1.7秒という結果になりました。
TimerAはヒーターのウオームアップ時間になります。TimerBは電源出力の起動時間(=出力コンデンサのチャージアップ時間)となります。
(5)ラッチ回路
ラッチ回路は、負荷に異常が発生した場合、定電流回路が動作した事を検出し一定時間後に定電圧制御回路をシャットダウンするものです。
下図は定電流回路が動作した事を検出する回路になります。
定電流回路が動作すると、オペアンプ出力からコンマ数mAの電流が流れます。この電流をオペアンプの出力に接続したフォトカプラの一次側ダイオードに流し、二次側を検出信号としています。
ダイオードと並列に接続された100KΩと910KΩですが、フォトカプラの逆耐圧が5Vと非常に小さいので保護のため入れてあります。
下図は、シミュレーション回路になります。
フォトカプラの一次側に電流が流れると二次側のトランジスタがオンします。
オペアンプのマイナス入力端子の電圧はR1//R2XC1の時定数で+15Vから徐々に下がっていき、プラス入力端子の電圧より下がった時点でオペアンプ出力はマイナス側からプラス側に反転します。
オペアンプ出力がプラスになると接続されたFETがオンします。
FETのドレインはフォトカプラ出力のコレクタとワイヤードORになっているため、この状態は電源を切るまで保持されます。
この回路は信号のエッジでラッチするのではなく時間(CRの時定数)でラッチするので、ノイズに強く誤動作しにくい回路となっています。
この回路でオペアンプはコンパレータとして動作しています。入力のプラス端子とマイナス端子の間に保護用のダイオードが入っているオペアンプは使用できませんので注意してください。
下図はシミュレーション結果になります。
上記で説明した内容通りの動作となっています。
フォトカプラの一次側に電流が流れてからラッチするまで3.9mSです。
参考文献:
遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.158−173
本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90
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