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カテゴリー「±78V電源」の5件の記事

2017/04/28

真空管アンプ電源
 ±78V電源 実験その2

治具のターミナルに2.2μFのフィルムコンデンサを追加したところ、過渡応答の波形に約100KHzの細かな振動波形が現れました。



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確認回路



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コンデンサなしの過渡応答(左)と2.2μF追加時の過渡応答(右)



電源が不安定になって発振しているのかと慌てました。この現象は、電源基板と治具を接続するケーブルのインダクタンス成分が追加した2.2μFとLC共振を起こしているためであると分かりました。


LCRメータで測定したところ、接続ケーブルのインダクタンスは800nHでした。端子や内部配線と合わせて1000nHとしてシミュレーションしたところ、実測の結果と波形が一致しました。1000nHと2.2μFの共振周波数は107KHzです。



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シミュレーション回路



22f_2
過渡応答波形



ほんとうに安定性に変わりはないのか、クローズループの特性をシミュレーションしてみましたが、2.2μFの有り無しで変化はありませんでした。



22f_3





参考文献:
  遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.86−157
  本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90



2017/04/21

真空管アンプ電源
 ±78V電源 実験

下図は回路構成図になります。
電源トランスと整流基板は本番の筐体に組み込むものをそのまま使っています。
実験基板にはユニバーサル基板を使っています。



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下図は回路内各部の電圧を測定した結果です。



78v



下図はロードレギュレーションを測定した結果です。



78v_2



100mA程度の電流を流しても出力変動は非常に小さく、マルチメータで値を観測することはできませんでした。200mA〜300mAは流さないといけないみたいです。ただ、治具のところで測定したデータには電流に比例した電圧低下がみられました。これにより、治具までのケーブルと接続端子、スイッチを合わせた抵抗分が75mΩ程度あることが分かりました。

下の写真は過渡応答を観測したものです。



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+78Vの過渡応答(左)と−78Vの過渡応答(右)
上は0.47μFと100KΩによってDC分を除いた出力波形
下はFETの駆動電圧



収束時間はシミュレーションの結果とほぼ一致しました。安定動作していると言えます。



今回の実験では、出力インピーダンスと出力雑音は環境がなく測定することができませんでした。次の機会には、治具を作成して測定したいと考えています。





参考文献:
  遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.86−157
  本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90










2017/04/14

真空管アンプ電源
 ±78V電源 実験環境

設計した回路を製作し所望の特性が出ているか確認しました。
以前はホーロー抵抗やセメント抵抗をつなぎ変えて測定していました。今回はアルミケースに抵抗やスイッチを組み込んだ簡易的な治具を製作しています。


下図はロードレギュレーションの測定回路です。



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下図は過渡応答の測定回路です。



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FETは手持ちのものを使いました。2SK3564は、900V3AのNチャネルMOSFETです。2SJ407は、−200V−5AのPチャネルMOSFETです。出力インピーダンスを620Ωに調整した発振器を直付してゲートを駆動しています。


下の写真は製作した治具になります。



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少し面倒臭いですが、測定項目に応じて内部の配線を変更します。



今回の実験のためということではないのですが、アナログオシロを導入しました。



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Tektronixの2465Bです。ヤフオクで、出品者がコンデンサを新品に取り換えるなどして整備したものが出ていて、幸運にも相場の半値ほどで落札できました。外装はピカピカでランプも全て点灯しますし画面も明るく、機能的な問題は出ていません。ただ、年代物なので時間軸と電圧軸の精度には難があります。
でも、アナログオシロはよいですね。電子工作をしている、という喜びがじわじわとわいてきます。


過渡応答の測定にはケースレーの発振器3390を使用しました。下の写真は出力インピーダンスを620Ωに調整しているところです。



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下の写真は実験環境?の全景です。



Photo_6



参考文献:
  遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.86−157
  本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90






2017/04/07

真空管アンプ電源
 ±78V電源 シミュレーション

設計した電源回路をシミュレーションします。

下図はプラス側のクローズループ特性をシミュレーションした回路とその結果です。
積分回路のコンデンサ容量を2.2pFから100pFまで変化させて解析しました。



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78v2



下図はマイナス側のクローズループ特性をシミュレーションした回路とその結果です。



78v1_2



78v2_2



上記の結果を表にまとめたものが下図になります。



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設計値とは少しずれましたが、大きくは違っていません。
2.2pFから100pFまで変化させても位相余裕は70deg以上あり安定です。




下図はプラス側の過渡応答をシミュレーションした回路とその結果になります。
積分回路のコンデンサ容量を2.2pFから100pFまで変化させて解析しました。


周波数分析機があればループゲインや位相が測定可能ですが、我々アマチュアの場合には矩形波による過渡応答を見て安定性を判断するしかありません。シミュレーションの結果と実測値を照らし合わせて安定性を判断することになります。



78v3



78v4



ここで重要なのはピークの電圧ではなくて収束するまでの時間です。収束時間はループゲインの0dB周波数の逆数(周期)とほぼ一致しています。オーディオ帯域が20KHzであることを考えると、0dB周波数にはそれなりの数字が必要であることが分かります。ただ、大容量のパスコンを用いれば実害はほとんどないのではと思います。

下図はマイナス側の過渡応答をシミュレーションした回路とその結果です。



78v3_2



78v4_2



シミュレーションでもう一つ大切なのは、設計した回路がその通り動作しているかを各部の電圧、電流で確認することです。


下図は、各部の電圧と電流を一覧表にしたものです。特に問題となる箇所は無いようです。



78v




参考文献:
  遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.86−108、p.130−136
  本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90





2017/03/31

真空管アンプ電源
 ±78V電源 設計

KT88プッシュプルアンプの電源を再製作しました。

B電源は+460V、
電圧増幅段用は±78Vと±15Vで、全てオペアンプを用いた回路です。

尚、これらの電源は遠坂俊昭氏の「電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計」を参考にして設計したものです。


下図は安定化電源回路の原理図です。



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比較増幅部は基準電圧Vrefと出力電圧Voutを比較/増幅し、エミッタフォロア部を制御します。

下図は、実際に使用する回路をもとにしてより具体的に説明した図です。



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比較増幅部はオペアンプとR1、R2、C3で構成されています。これは図の左下で表したように積分回路として動作します。

エミッタフォロア部はTR1とTR2がダーリントン接続され、過電流保護回路を介して出力コンデンサC1に接続されています。

過電流保護回路は、負荷電流が大きくなりR3両端の電圧が0.6Vを越えるとTR3がオンし、TR1とTR2をカットオフします。

これらは図の右下で表したように抵抗(エミッタフォロアの出力抵抗Ro+過電流検出抵抗R3+コンデンサの等価直列抵抗Rc1)とコンデンサC1の直列回路として動作します。


下図は比較増幅部のゲイン特性とエミッタフォロア部のゲイン特性を図示したものです。



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比較増幅部のゲインは、−20dB/decで減衰します。
エミッタフォロア部は周波数fAとfBの間のみ−20dB/decで減衰し他の領域はフラットです。
比較増幅部のゲインとエミッタフォロア部のゲインを足し合わせたものがクローズループゲインとなり、周波数fAとfBの間は−40dB/decで減衰し、fB以降は−20dB/decで減衰します。

図には書きませんでしたが、エミッタフォロア部の位相はfBまで遅れていきますが、それより上の周波数で戻って(進んで)きます。従って、比較増幅部とエミッタフォロア部を足し合わせたクローズループゲインが1になる周波数fCは、位相余裕を大きく取るためにfBより上に持ってくるのがベターです。参考文献には、fCはfBの3倍以上と書かれています。


下図は今回製作した±78V電源の回路図になります。設計出力電流は100mAとしました。



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ダーリントン接続したエミッタフォロアの出力抵抗Roは0.33Ωと計算されました。
エミッタフォロアの出力抵抗算出式は後の方に載せました。

過電流検出抵抗R3は2.2Ωです。

出力コンデンサには日本ケミコンのKMGシリーズを使いました。100V470μFの等価直列抵抗Rc1を0.2Ωとしています。

これらの条件から、fA=124Hz、fB=1690Hzが求まります。

fCは参考文献に従い30KHzとします。


この後、比較増幅部の抵抗とコンデンサの値を求めていきます。
計算方法は参考文献に詳しく解説されていますので参考にしてください。

上記回路では、プラス側C1=8.6pF、マイナス側C2=12.4pFと計算されました。
両者とも10pFを使用することとします。


ここまで説明した以外のところですが、
定電流ダイオードはダーリントン接続した1段目トランジスタのベース電流を供給しています。抵抗ではなく定電流ダイオードを使っているのは、電源入力に含まれるリップル分の影響をできるだけ小さくするためですが、ダーリントン接続しているのであまり意味がないかもしれません。

±78V電源出力短絡時はオペアンプから過電流保護回路のトランジスタを通って出力方向に電流が流れます。オペアンプ出力も短絡されたのと等価になります。オペアンプの電源は外部から取っているため、出力短絡時には過大な電流が流れる危険があります。オペアンプを保護する目的で出力に620Ωを入れています。

620Ωの後にツェナーダイオードが入っていますが、これはオペアンプ出力電圧をかさ上げするために必要になります。

マイナス電源はプラス電源の出力を基準に動作するトラッキング電源としています。



下図は、エミッタフォロア出力抵抗の算出方法を示したものです。



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参考文献:
  遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.86−108、p.130−136
  本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90