Technics SL-1300G ヒアリング
試聴環境は下記の通りです。
ラックスマンのPD-171Aとの比較になります。ラックスマンとテクニクスはカートリッジのオーバーハング調整の値が同じなので、カートリッジをシェルごと交換してそのまま使うことができます。
フォノケーブルは、ラックスマンがXLRタイプのZonotone Shupreme TW-1、テクニクスがRCAタイプのZonotone 6NTW-6060 Meisterです。
ACケーブルは、ラックスマンが装置添付品、テクニクスがオヤイデ電気のTUNAMI GPX-Rです。
パワーアンプには自作7591三結ppの他NuPrime社のSTA-9を使いました。
【総評(個人の感想)】
2025年6月号のSTEREO誌にTechnics SL-1300Gのレビュー記事が載せられています。4名の先生方が試聴記を書いておられます。内容は私がこの機種を聞いて良いと感じたところと概ね同じです。それは以下の点です。
① SNが良い
② 低域がカチッとしていて分解能が高い
③ 回転(トレース)の安定性
これらの特長は、クラブDJの仕事やフェアのデモ等でとても役立つことだと思います。
しかし、音楽鑑賞目的で使用した時の印象は全く別物です。テクニクスのプレーヤーは技術的にアナログプレーヤーはこうあるべきであるという思想で開発したように思われます。それに対し、ラックスマンのプレーヤーは音楽を聴くためにアナログプレーヤーはこうあるべきと開発したように思われます。ハイレゾ等の高度な音源が手に入る現代、それでもレコードで聴こうとする好事家は正確で高忠実度な再生音だけを期待しているのではない、というところがテクニクスにとって難しいところだと思います。
レコード盤に針を落とし音楽聴いている時、フーッと体の力が抜けたり高揚感に包まれたりします。このレコード再生独特の音楽空間が我々に満ち足りた心地よさをもたらします。ラックスマンのプレーヤで聴くとそれが感じられますが、テクニクスのプレーヤーからはレコード盤に入っている情報が伝達されてくるだけで感情に訴えかけてくるものが薄いです。先のSTERO誌の試聴記にも音楽が楽しいとか感動が伝わるとかいった表現は見当たりません。それが先生方の正直な印象なのかもしれません。
私が使っているラックスマンのプレーヤーは発売当初¥495,000でした。後継機の価格は¥990,000なのでテクニクスの¥396,000とはそれなりの価格差があります、しかし、量産効果を意識した作りと音質、そしてオーディオ機器としてのたたずまいを考えるとこの半額ぐらいの値付けが妥当なのではと感じています。
【レコードを聴いた感想】
以下に3枚のレコードの試聴メモを載せます。これら3枚は、いろいろ聴いた中でテクニクスのプレーヤーがその特長を発揮していると感じたものです。
◎ウィリアムス 浩子の"A Wish"から「Rainy Days And Mondays」
もっきりやでPA無しで歌うのを聴いたことがありますが、バラードの上手い美人美声の歌手です。
テクニクスはCDとよく似たシャープな音です。ベースの音像がタイトではっきりしていているのでリズムセクションの動きが手に取るように分かります。声はややきつめだけど許容範囲内です。
ラックスマンは柔らかく優しい音色。低域は少し膨らんでいて緩い音ですが、逆にベースの音圧が感じられるのでこれはこれで良いと思います。声にしっとり感があって癒されます。
テクニクスの方は楽譜通り淡々と歌っているように感じます。それに対し、ラックスマンは感情のこもった歌い方で聞き手の心に訴えかけてくるように感じます。
◎アート・ペッパーの"Modern Art "から「Blues In」〜「Bewitched」
"Meets the Rhythm Section "と並ぶペッパーの名盤です。
このレコードはゆったりとしたリズムの中でトロリとしたペッパーのサックスが聞きものなのですが、本物はもっとゴリっとした音だったのではないかと穿った見方をする人もいます。D級アンプで聴くとテクニクスとラックスマン両者ともそのような方が納得する音を出してきます。リマスターした音源ということもあるでしょうが、はっきりくっきりしたアルトの音色が出ています。細かく聴いていくと、テクニクスの方はサックスのあさがお付近にマイクを置いたような楽器のイメージ通りの音です。ラックスマンはサックスのマウスピース付近にマイクを置いたような振動やブレスを感じる鳴り方です。この差は好みが分かれるところだと思います。
7591三結ppアンプで聴くと、このアルバムの味であるうっとりと聴きほれて眠くなるようなサックスの音色が楽しめます。それはラックスマンで聴いた方がより”しみじみと”いいなーと感じられます。
◎ロバータ・ガンバリーニの"Easy to Love"から「I Loves You, Porgy」
同じイタリア出身の歌手にはジャズ批評で高評価のエルがいます。暗く湿気を帯びた寒色系でガンバリーニとは対照的な歌い方のように思います。ガンバリーニはタワーレコードのホームページで”豊かな表現力と器楽的で洗練された歌唱”と紹介されています。
テクニクスのSNがとても良いのに驚きます。スタジオの静の空間がリアルに再現されます。盤の録音が良いこともあって、バックの演奏が立体的に展開されます。ウィリアムス 浩子の盤と同様でベースの音がくっきりと聞こえます。肝心の声ですがちょっとキツめです。歯擦音が少し気になります。朗々と歌い上げているのですが表面にバリアがあってこちらの気持ちが中に入っていけない感じがあります。
それに対してラックスマンはうっとりする歌声です。楽曲の中に自分自身が包まれていくような感じがします。
【改善して欲しい点】
1)フォノケーブル
装置に添付されているのは写真のような赤白ケーブルです。硬く刺々しい音で、普段聴いている音楽が別物に聞こえます。ラックスマンには素晴らしい音質のケーブルが添付されていました。オーディオメーカは添付品にも気を遣っています。テクニクスは家電メーカーなのだと改めて認識しました。
フォノケーブルはゾノトーンの6NTW-6060 Meisterに変更しました。
2)電源ケーブル
添付されているケーブルは2ピンのアースケーブル付きです。一般家庭ではアース端子付きの壁コンセントでないことが多いです。そのためこの形態のケーブルを添付することになったのだと思います。私としてはもっと高品質なケーブルにしてもらいたいです。
電源ケーブルはオヤイデ電気のTUNAMI GPX-Rに変更しました。だいぶ以前に購入したものです。現在はV2になっています。
3)出力端子とアース端子の位置
プレーヤーの底部にあって指が入りません。取説には梱包箱を利用し装置を斜めに固定してからケーブルを接続しなさいと書いてあります。これは最悪です。最近発売された他社のプレーヤーはアンプと同じように背面に端子が出ています。パナソニックほどの大メーカがデザインレビューをしていないなんてことはないと思いますが、Aランクの要改善事項です。おそらく、アームベース部の金型を他機種と共通で使っていて、分かっていても変更できないのではないかと想像します。
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