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2024/08/06

オペアンプの音質比較ーーーADCの製作

Icpcg

 

試聴環境は下記の通りです。
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Photo_20240806095001



試聴したオペアンプは以下の7種類です。

Opa1611p
OPA1611


Opa1655p
OPA1655


Opa627p
OPA627


Opa604p
OPA604


Ad797p
AD797


Lt1028p
LT1028


Muses05p
MUSES05



【レコードの試聴結果】

◎Lori Lieberman の"Truly"から「Killing Me Softly」
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(A)0PA1611
TIのカタログではこちらが上のランクであるが、私の環境ではOPA1655より落ちる感じである。ピアノの音に輝きや厚みがない。ギターも線が細い。

(B)OPA1655
滑らかな音質でかつ解像度が高い。声の細かな変化も聞き取れるが少し硬め。全体として静かな印象で、音楽が淡々と進んでいく感じ。

(C))OPA627
針を下ろすと同時にグッと音楽に引き込まれていく。ピアノとギターの音が輝かしくそして力強い。歌い手の表情が見てとれるくらい解像度が高い。スタジオの空間が感じられた唯一のオペアンプ。もっと聞いていたいと思わせる音である。

(D)OPA604
ピアノの音が少し曇っていてギターも弦を弾く様子がつかめない。全体にリアリティがなくベターっとした音に感じられる。歌は切々にではなくトツトツという感じである。しかし、演奏も歌もなんとなくまとまっていて聞きやすい。

(E)AD797
ピアノがひとまわり大きくなったかのように聞こえ、ギターの弦を弾く音が強いと感じる。ボーカルは身体の奥から声が出ているような力強く凄みのある歌声である。声が消えゆく時の微妙な表現は苦手であるが、独特の個性があって説得力のある音と感じる。

(F)LT1028
ピアノの音はアタックが強めに感じられるが少し曇りを感じる。ギターの音は若干太め。ボーカルの声は大きく聞こえるが表情が暗い。

(G)MUSES05
コントラストの高い音でボーカルの細かな表情がわかる。ギターの音には輝きがありドラムの音には量感がある。忠実な再生音でリアリティもあると思うのだが、OPA627のような音楽に引き込まれグッとくる感覚がほしい。

(C)>(E)>(G)>(B)>(D)>(A)>(F)



◎MAYAの"Billie"から「Left Alone」
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(A)0PA1611
ベースの音が弱く軽い。弦を弾く音が”ペンペン”と聞こえる。声は綺麗だけど迫力がなく若い感じ。ダークな感じが欲しい。

(B)OPA1655
透明感のある音であるためか軽く感じる。ベースの音は倍音強めで薄い感じ。ボーカルの声が強く高く感じる、エネルギーバランスが高域よりである。

(C)OPA627
ベースの音が少し遠い。声はクリアで細かな表情が見てとれるようである。しかし、全体に音圧が低いように感じられ印象が薄い。この曲のドロドロ感は感じられない。

(D)OPA604
解像感がなくベターっとした感じ。ボーカルの声に伸びがなく細かな表情が再生できていない。アルコは苦手なようである。

(E)AD797
声の押し出しが強い。ベースの音が深く沈み込む。ベースと声の距離は近い。ドスの効いた重量感のある音調がこの曲に合っていてグーッと引き込まれていく。

(F)LT1028
声が少しハスキーに聞こえる。ベースの音はAD797ほどではないが強く感じる。もう少しクリアさが合ったなら歌い手の表情がよく見えて説得力のある音になるのではと感じた。

(G)MUSES05
ベースも声もクリアで生々しい。ベースの弦や胴の鳴る音がしっかり分離され素晴らしく質が高い。また、ベースと声の距離感がしっかり感じ取れる。このような空間表現に長けたオペアンプはMUSES05のみである。

(G)>(E)>(C)>(F)>(B)>(A)>(D)


◎Jan Harbeck (ヤン・ハルベック)の「Someday You'll Be Sorry」(For Jazz Audio Fans Only Vol.16収録)
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(A)0PA1611
サックスとピアノの音がやや曇っている。解像感も良くない。エネルギーバランスは高域寄りでベースの音が小さく聴こえる。

(B)OPA1655
サックスの音もベースの音も明瞭でしっかり自己主張している。エネルギーバランスはやや高域寄りであるがバランスは悪くない。気持ちよく聞ける音である。

(C)OPA627
全体的に解像度が高く、サックスの細かな息づかいやシンバルの小さな音がちゃんと聴こえる。サックスの音に力がありスピーカー間に演者がどしっと立っている感じ。演奏者の体の動きが見て取れるようなリアリティがある。

(D)OPA604
サックスの音もピアノの音もベースの音も角が丸まっている。ベースはボーンボーンでピアノの音はポロンポロンだけど、それが返って聞きやすさにつながっている。全体として軽めの音という印象である

(E)AD797
サックスの音がバリトンかと思うほど太い。ベースの音はモゴモゴしているけど太くて量感が感じられる。空間表現は苦手でべたっとした感じではあるが、このゴリゴリ感はクセになる気持ちよさ。

(F)T1028
サックスとベースは太めの音で悪くない。ただ分解能はそれほどではなく音がにじんでいるような感覚もある。もうちょっと明瞭さが欲しいが、この曲にあった音ではある。

(G)MUSES05
解像感があって滑らかな音。ピアノの音も綺麗で、サックスの細かな息使いもよく再現されている。綺麗系の音でエネルギーバランスはニュートラル。破綻することのない音で解像度の高さではNO.1。

(C)>(G)>(E)>(F)>(B)>(D)>(A)


◎Marty Paich (マーティ・ペイチ)の"Broadway Bit"から「It's All Right With Me」
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(A)0PA1611
エネルギーバランスは高域寄りで少しうるさく感じた。解像度はOPA1655より劣る印象。ベースを中心としたリズムセクションが前に出てくる感じだが管楽器に輝きがない。ヴィブラフォンの音は鉄琴の音が中心で響きが少ない。

(B)OPA1655
SNがよくステージを見渡せる感じが良い。うるさくはないがエネルギーバランスは高域寄りである。ヴィブラフォンの音はやや細身。トランペットのソロの音が美しい。ベースの音が弱く感じられノリは良くない。

(C)OPA627
管楽器の音に迫力がある。ヴィブラフォンの音は打音と共鳴音のバランスがよくリアル。ベースの音がしっかり聞こえて演奏全体のノリを良くしている。ビッグバンドの演奏にのめり込んでいく快感が味わえる音である。

(D)OPA604
音の角を丸めたように聴こえる。解像感がなく各楽器の特徴も明瞭に再現されない。ビッグバンドのエネルギーを再現するには音が軽くて向いていないようである。

(E)AD797
低域にエネルギーがあり演奏全体の迫力が増している。ヴィブラフォンが打鍵音中心であったりベースの音像が大きかったりするものの、演奏のノリが素晴らしく良い。この時代の演奏にマッチした音である。

(F)LT1028
楽器の音の鮮度が悪く感じる。ヴィブラフォンは木琴の音のように聴こえる。高域が派手なわけではないけどうるさく感じる。演奏の一体感が感じられない。

(G)MUSES05
管楽器がきれいにハモる。ベースの音は弱め。ヴィブラフォンの音は打音と共鳴音のバランスが良い。全体にきれいな音であるがビッグバンドのノリは感じられない。


(C)>(E)>(G)>(B)>(A)>(D)>(F)


【総評】

(A)0PA1611
TIのホームページでオーディオ用オペアンプとしては最高グレードのUltimate(最高)と紹介されている。エネルギーバランスが高域寄りで音圧が低いように感じる。その結果、表現力が低下し説得力のない演奏になっている。デジキーで@¥729とOPA627と比べると安価なのでコスパが良い石と言える。

(B)OPA1655
TIが0PA1611より一段下のPremier(プレミア)と位置付けているが、今回の聴き比べでは逆転しているのではないかと思えた。忠実度が高く声も楽器も滑らかだが、エネルギーバランスはやや高域寄りである。デジキーでの価格は@¥359である。この音でこの値段はお買い得と言える。TIのオーディオ用オペアンプはカーオーディオや映像用AV機器を意識しているのかもしれない。

(C)OPA627
物理的な特性を基準にして解像感やSNを競うと2番手に位置しているかもしれないが、音楽を聴くとその説得力のある演奏に魅了されてしまう。レコード盤に針を落とし音が出た瞬間にグッとその世界に引き込まれる。ただ、音数が多くて表現過多でうるさく感じてしまう場合がある。マウサーで@¥4913。

(D)OPA604
かなり古い石で入手性が悪い。解像感はそれほどなくて軽い音。一昔前のオーディオ機器の音が出てくる?といった雰囲気である。古めのロックやポップスには味があって向いているかもしれない。ハイレゾのような現代風の音を求めるのには不向きと言える。かなり以前にRSで購入。

(E)AD797
細かな音を忠実に再現する能力は少し劣る。しかし、その音は骨太で音楽を積極的に聴かせるタイプである。音楽性という観点ではでOPA627と近い。趣味性の高いレコードを聞くときに個性的でガッツのあるAD797の音を選んでも良いのではと思う。かなり以前にRSで購入。

(F)LT1028
ローノイズで計測器等に使われるオペアンプであるが、聴感上のSNはそれほどではなく解像感もあまりない。音楽のメリハリや歌い処をうまく再生できない。元々オーディオ用途でないので無いものねだりなのかもしれない。かなり以前にRSで購入。

(G)MUSES05
最初に出たMUSES01は、解像度は高いものの線の細い音であった。しかし、このオペアンプは解像度はそのままでニュートラルな再生音を聴かせる。物足りないと感じることもあるが、それも個性と考えるべきかもしれない。今回の試聴は低音を重視しているので評価が低く出ることもあったが、このオペアンプの特長は滑らかさと解像度の高い中高音にあり、録音やカッティングが新しいほど他を圧倒的に引き離す音を聴かせる。秋月で@¥3100。生産中止になったのは残念。


【最終選考】

OPA627とMUSES05に絞って聴き比べをしました。

・松任谷由実の”悲しいほどお天気”から「緑の町に舞い降りて」
  OPA627 :◎  MUSES05 :○

・山本剛の”MISTY for Direct Cutting”から「Misty」
  OPA627 :△  MUSES05 :◎

・レイヴェイの”Bewitched”から「Misty」
  OPA627 :△  MUSES05 :◎

・ビートルズの”Abbey Road”から「Come Together」
  OPA627 :◎  MUSES05 :△

・アリスの”Stereo Sound アリス”から「遠くで汽笛を聞きながら」
  OPA627 :○  MUSES05 :◎

・ダイアナ・クラールの”Wallflower”から「Desperado」
  OPA627 :◎  MUSES05 :○

・カラブリア・フォーティの”Prelude To A Kiss”から「Waltz For Debby」
  OPA627 :△  MUSES05 :◎

・ユタ・ヒップの”Jutta Hipp With Zoot Sims”から「Violets For Your Furs」
  OPA627 :◎  MUSES05 :○

・サンタナの”Moonflower”から「She's Not There」
  OPA627 :○  MUSES05 :◎

・ブライアン・ブロンバーグの”La Faro”から「My Foolish Heart」
  OPA627 :○  MUSES05 :◎


MUSES05はピアノの音が良いです。美音です。それに対してOPA627のピアノの音には若干の濁りが感じられます。ボーカルはMUSES05がうっとりするほど滑らかなのに対し、OPA627はハスキー系のアーティストで強みを発揮します。サックスは細かな息づかいがリアルに聞こえるOPA627に軍配が上がります。ロック系はOPA627の独壇場かと思いきや、うるさく感じることも多くて、そのような時はMUSES05の冷静に整理された音場に分がありということになります。
どちらにしようかずいぶん迷いました。OPA627のビートルズに拍手喝采だったのですが、MUSES05のレイヴェイがあまりに良くてこちらを採用することとなりました。


【友人のOさんの評価】
これまで何度か紹介している白山市のOさんにもオペアンプのヒアリングをお願いしました。OさんはこれまでiFi audioのiPhonoを使っていましたが、今はFidelity-Research 製FRT-4とLUXMAN製LXV-OT10の組み合わせに変更されています。カートリッジは、モノはオルトフォンをステレオはリンを使用しています。
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LXV-OT10は、オペアンプを使ったNF型イコライザ+オペアンプを使ったトーンコントロール+12AU7を使ったカソードフォロアーという回路構成です。氏はこれまでも素子の組み合わせを試していたそうで、音質に対する影響度は初段のオペアンプが7割、後段のオペアンプが3割とのことです、初段にOPA627を使った時の優秀さを感じつつも、クラシックファンということもあってMUSESシリーズの組み合わせに落ち着いたようです。


Icpcg8



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