±12V安定化電源の設計
電源ユニットから±15Vを受けて±12Vに変換する安定化電源について説明します。この電源はオペアンプを使用したドロッパー型で、電解コンデンサを使わず全てのコンデンサをフィルム型としています。
安定化電源は制御部と誤差増幅部とで構成されます。抵抗やコンデンサの定数は事前に決めてあるところがあります。制御部の過電流保護抵抗は1.5Ωとしてあります。誤差増幅部の基準電圧は5Vとし、出力電圧の誤差検出抵抗は280Ω(560Ω//560Ω)と200Ωの組み合わせです。
制御部はエミッタフォロアーとなっています。エミッタフォロアーの出力抵抗と過電流保護抵抗R4と出力コンデンサC2とで構成される回路によって、赤線で示すようにカットオフ周波数faから-20dB/octで減衰する特性を持ちます
誤差増幅部のフィードバック回路はR9とC3の直列回路となっています。このためゲイン周波数特性は青色の線で示すようにf1からf2までの平坦部を持ちます。この部分では位相が戻ってくるため位相余裕を確保するのに役立ちます。
誤差増幅部の平坦部でループ利得(制御部の利得+誤差増幅部の利得)がゼロになるように各部の定数を設計します。この周波数foはオーディオ帯域の中で可聴周波数帯よりは出来るだけ高く設定したいところです。今回はfo=75Kzを目標にしました。
まず、fo=75Kzにおける制御部のゲインをシミュレーションしてみます。出力コンデンサC3はルビコンの薄膜高分子積層コンデンサPMLCAP16V22μFを5個並列で使用します。直列の等価直列抵抗は1mΩと小さな値としました。
上図の通り、fo=75Kzにおける制御部のゲインは-40dBとなりました。
次は誤差増幅です。誤差増幅部のゲインはR7とR9の比で決まります(40dB=100=R9/R7)。R7はあらかじめ280Ωに設定してありましたからR9=28kΩと計算されます。E24系列から抵抗を選択するとR9=27kΩになります。
参考文献にはfo≧3f1という条件を満足するようにと書かれています。この条件を満たすC3の値を計算します。
上記式の計算からC3は236pF以上あれば良いことが分かりました。今回は470pFとします。
R9=27kΩ、C3=470pFとして誤差増幅部のゲインをシミュレーションします。
上図でハイライトされた数値となりました。
各部の定数が決定したので、負荷電流を変えながら系の安定性をシミュレーションします。
負荷抵抗68.57Ωの時負荷電流のトータルは200mAとなります。負荷抵抗96Ωの時150mA、160Ωの時100mA、480Ωの時50mAです。負荷電流が増加すると位相余裕も増える傾向にありますが、負荷電流50mAでも十分な安定性があると言えます。
最後に出力インピーダンスをシミュレーションします。負荷電流は100mAとしました。
参考文献:
遠坂俊詔.高安定・低雑音!カスタム・リニア・レギュレータの作り方第3回 フィルム・コンデンサ・タイプ.トランジスタ技術.CQ出版社.2014-04.p.185−190.
遠坂俊詔.電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計.CQ出版社.2013-06-25.p.124−154.
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