MUTEC MC-3+USB
デジタルオーディオ系で便利に使えるMC-3+USBを導入しました。この機種はクロックジェネレータとインターフェースコンバータの2つの機能を持っています。
内部クロックまたは外部クロックを使ってワードクロックを生成し、クロックジェネレータとして外部に供給することができます。先日導入したBrooklyn DAC+にはワードクロック入力端子が備わっていますから、その効果を期待したいところです。
インターフェースコンバータとしてDoP信号とDSD信号(もちろんPCM信号も)をPCM信号に変換して出力します。物理インターフェースは、入力がUSBとS/PDIF同軸/光そしてAES/EBU、出力はS/PDIF同軸/光とAES/EBUになっています。MacBookAirとDG-58の間に入れてDDCとして使ったり、DG-58とBrooklyn DAC+の間に入れて音質改善という使い方ができそうです。
インターフェースコンバータとして使うとき、内部クロックまたは外部クロックを使ってリクロックするとあります。本来の目的は全てのディジタル機器を同じタイミングで動作させることにあると思うのですが、レビュー記事で取り上げられている音質改善効果も期待したいところです。
梱包箱です。
梱包箱を開け内蔵物を広げた写真です。ボールペンがおまけで付いてきます。
正面の写真です。
背面の写真です。
MacBookAirと並べて置きました。
Audirvanaの設定画面です。
(1)クロックジェネレータの動作確認
下図はフロントパネルとバックパネルの対応を示したものです。ワードクロックの出力はBNCコネクタで4系統(インピーダンス75Ω)あり、1と2は出力が2本となっています。
下の写真はUSB入力を内部クロックでリクロックするモードになっています。ワードクロックは全て1倍なので入力のサンプリング周波数と同じになります。すなわち、入力信号が44.1KHzサンプリングであればワードクロックも44.1KHzとなります。右端にオシロスコープの波形を載せてあります。出力系統1の2本の波形をとらえたものですが、2つの信号は同位相になっています。
下の写真はクロックジェネレータの機能のみを使っていて、内部クロックを使って192KHzのワードクロックを生成、全ての系統を1倍で出力しています。
下の写真はクロックジェネレータの機能のみを使っていて、内部クロックを使って192KHzのワードクロックを生成、系統1のみ4倍で出力しています。
(2)DDCとして使ってみる
GUSTARD社のU16とガチンコ勝負です。
接続は下記のようになっています。PC以外はアキュフェーズPS-1230から電源供給しています。DDC2機種の電源ケーブルは添付品から市販品に交換し、アースピンを浮かせずに使っています。
U16は解像感が高く感じます。ボーカルの細かな息づかいやベースで弦を弾く時の音などがリアルに聞こえます。しかし、そのような解像感が、本来の音とその周りにまとわりついている音の二つで構成され得られていることに気づきます。音像をシャープに削れるだけ削ったんだけど、削りカスが音にまとわり付いているような感じです。エコーを感じるとか雑味を感じるとか表現されるかもしれません。雑味も味のうちなので楽しめる楽曲もあるのですが、逆にうるさく感じてしまうこともあります。
MC-3+USBですが、U16の高い解像感はそのままに音の周りに付いているものを取り去ったような音です。U16は静かなところでも「シーン」という音が聞こえるような感じですが、MC-3+USBは「無」に近くSNがよくなったように感じます。無味乾燥な音のように思われるかもしれませんが、そんなことはなく柔らかく優しい音と表現できます。ほっと安心できる音です。楽器間の分離も素晴らしく、音場がより立体的に感じられるようになりました。
この勝負は中華オーディオの負け、ドイツオーディオの勝ちとなりました。
(3)ワードクロックを使ってみる
①MC-3+USBをDDCとして使いワードクロックをBrooklyn DAC+に入れるパターンと、②GUSTARD U16をDDCとして使いMC-3+USBはクロックジェネレータとしてワードクロックをBrooklyn DAC+に入れるパターンの2通りを聞いてみました。
①はかなりの変化でした。各楽器のコントラストが強くなって彫りの深い音になり、音圧も強めに感じます。ピアノやシンバルの音が華やかになっていて楽しいです。うるさくなるギリギリのところで上手く鳴っています。ワードクロックの効果がこれほどあるとは...。今までバカにしていた”クロック”ですが、その魔界に足を踏み入れてしまったのかもしれません。
②でも改善効果を確認できますが、(2)のワードクロックを使わないMC-3+USBより評価は低いです。
(4)DG-58とBrooklyn DAC+の間にMC-3+USBを入れる
下図のように接続しました。
MC-3+USBを入れたほうが音質は向上します。ワードクロックをDACに入れるとさらに音質は向上します。しかし、その向上度合いはわずかであり、違いを簡単に言い当てられるほどの差ではなかったと思います。
(5)まとめ
色々な接続を確認しましたが、最も良かったのは(3)の① ”MC-3+USBをDDCとして使いワードクロックをBrooklyn DAC+に入れる”でした。ただ、音圧が強く音に質量があるような感じで迫ってくるので、人によっては好き嫌いがあるかもしれません。今世紀に入ってからの好録音盤でオーディオ的快感に浸るには最適です。
MC-3+USBをクロックジェネレータとして使う、S/PDIF信号をリクロックするも確認しました。その効果は認められるものの、私のシステムではこれは必須だというほどのものではありませんでした。これは、MC-3+USBの問題というよりはGUSTARD U16をDDCとして使っていることが原因ではないかと推測します。上流で音質が決まっていて、下流でいかに音質向上対策を施しても効果は見えなくなるということです。
防音がしっかりした環境で聞けばもう少し的確に差をお伝えできたかもしれません。また、システム構成によって全く違った結果が出る可能性もあります。試聴に使う楽曲によっても印象は異なってくるでしょう。デジタル系の音質比較は、機器や接続による差が小さくて難儀します。楽曲の中で差のあるところを見つけて何回も聞き返し優劣を判断するというようなことになってきます。そのため集中力が必要で大変疲れます。
試聴ソフト
サーシャの「Ny After Dark」です。”Devil May Care”のノリの良い演奏、”A Nightingale Sang in Berkley Square”の深みのある歌声、最高です。
カメラ・メサの「Ambar」です。2020年3月のジャズ批評でボーカル部門第15位でしたが、私的にはインスト部門を含めて第1位だと思います。”This is Not America”は素晴らしいです。これってJAZZではなくRockかもしれません。
寺村容子の「Teremura Yoko Moods」です。”DANNY BOY”がグッときます。泣きのギターならぬ泣きのピアノです。
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(2)の時も(3)の時もリクロックしてるんですよね。
そうでないと音声を次の機器に送れないと思うのですが。
私もbrooklynとmc-3 USB を使っています。ワードクロックはmytekがあまり意味がないと言っていること、またいいBNCケーブルは高いこともあり、試していませんでした。
ひとまずオヤイデの安いBNCを買って試してみようと思います。
投稿: リクロック | 2021/06/18 07:57
コメントを頂き、ありがとうございます。
リクロックはおっしゃる通りです。
ワードクロックについては、
音声や映像の編集時に同期を取るために使うもので、
音質の良し悪しには関係ないと思っていました。
しかし、実際にBrooklyn DAC+に入力してみると、
解像度が上がったというのではないですが、
一つ一つの音の輪郭がはっきりし
エネルギーが強くなったような
より強いオンマイクになったような
(表現が難しいですね)
そんな変化を感じました。
投稿: コーちゃん | 2021/06/19 09:27