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2018/03/23

オペアンプLTC6090の特性を確認する 
  EL34/6CA7 3結 プッシュプルアンプ

アンプ各部のゲインと周波数特性を図示しました。



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構想段階で決めたのはNFB=14dB、仕上がりゲイン20dBということでした。また、シミュレーションから電力増幅段のゲインは−12.6dBとわかりました。これらから、電圧増幅段のゲインは 14dB+20dB+12.6dB=46.6dB 必要ということになります。

 

このゲインを稼ぎつつ、KNFをかけたEL34を最大出力までドライブするのに45.4V(0-P)、すなわち30Vrms強の電圧振幅が必要になります。

 

次にNFBを安定にかけるため各段の周波数特性について考察します。

 

電力増幅段の周波数特性はほぼ出力トランスの特性で決まってしまうので触りようがありません。スタガー比を稼ぐため、電圧増幅段(正確には出力管の前段)の周波数特性を電力増幅段に対して高い方に持っていくのか低い方に持っていくかします。KT88アンプでは電圧増幅段の周波数特性を伸ばし痛い目にあいました。それと、ドライブ段に使用するLTC6090は高域特性に関し期待できない感じもあります。今回も電圧増幅段の高域を電力増幅段に対して低い方に持っていくことにします。

 

電力増幅段のシミュレーションで、カットオフ周波数167.7KHz(-3dB)という結果が出ています。電圧増幅段のカットオフ周波数を20KHz(-3dB)以下とすれば、14dBぐらいのNFBであれば安定に動作すると思われます。

 

しかし、可聴帯域内で均等にNFBがかかるという観点でみると、20KHz(-1dB)ぐらいの特性が欲しくなります。やってみないとわかりませんが、20KHz(-1dB)でスタガー比を確保することを目指したいと思います。

LTC6090を作動増幅で使って20KHz(-1dB)となる増幅率を探ります。
差動増幅の片側の抵抗を{Rf}としてパラメトリック解析をします。
同時に .MEAS コマンドを使って−1dBとなる周波数を求めます。



Photo_2

               シミュレーション回路



Photo_3

               シミュレーション結果



Photo_4

               シミュレーションログファイル


最適値は 47KΩ-150Ω と 47KΩ-130Ω の中間にありそうです。ここでは 47KΩ-130Ω を採用します。この時のゲインは51.1dBありますから、電圧増幅段のゲインはLTC6090だけで稼ぐということになります。OPA604はボルテージフォロアーで使い、アンプの仕上がりゲインは24.5dBになります。

実際の特性はどうなのか、実験してみました。



Photo_5




測定データを表にまとめました。



Photo_6



赤く囲ったところの測定ができませんでした。不思議に思ってオシロスコープで波形を観測したところ、出力波形が下図のように歪んでいることが判明しました。



Photo_7




LTC6090のデータシートには下図のような歪率特性が載っています。



Photo_8




このグラフは、”こんなに歪率特性が良いんですよ”ということ言っているのではなく、”振幅が大きくなるとスルーレートの範囲内でも波形が歪みます”ということを示しているのです。事実、上記表で赤く囲んだところは、2πfV = 2π・40000・30 = 7.5V/μs でLTC6090のスルーレート規格 21V/μs より小さい値です。


ということで、電圧増幅段の設計は振り出しに戻りました。




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