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2018/03/02

合成特性曲線から出力を計算する 
  EL34/6CA7 3結 プッシュプルアンプ

プッシュプルアンプの出力計算について、合成特性曲線を描き負荷インピーダンスの1/4でロードラインを引いて見積る、ということが知られています。




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しかし、最近このことを説明した記事が少なくなっていると思います。これは、なぜ1/4なのかという説明が難解?なことと、合成特性曲線を描くことが面倒ということが理由なのだと考えています。そこで今回のEL34アンプでは、諸先輩方の知恵を拝借して少し深掘りしてみたいと思います。

まずロードラインが負荷インピーダンスの1/4という事に関してですが、私が知っている限りでは、参考文献として紹介した武末数馬氏の記事が最も分かりやすいです。上図はその内容をわかりやすくまとめたものです。

簡単に言ってしまうと、真空管2本が並列動作しているのでトランスの巻数が1/2になり結果として負荷インピーダンスがその二乗の1/4になる、という事です。回路を等価的に変形していくのですが、電圧源はショートさせて考えることができる、とかは難しいかもしれません。その辺は慣れですね。



次に、中林歩氏が主催するAyumi's Labの記事をお手本として、EL34_3極管接続の合成特性曲線をLTspiceを使って描画することを試みます。

電源トランスの仕様からプレート電圧を400V、バイアス電流を50mAとします。(プレート損失+スクリーン損失)は20Wになります。EL34を3極管接続する時の(プレート損失+スクリーン損失)の最大値は30Wなので20Wは少な目の設定です。60mAでも80%のディレーティングですから、もう少し流してもよいのかもしれません。真空管を消耗品と考えるならばギリギリでも良いと思います。

まず、シミュレーションでバイアス電流が50mAとなるグリッド・カソード間電圧をシミュレーションで求めます。




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.Measコマンドを使って求めると、-33.3Vとでました。キリの良い値を取り−33Vとします。(−33Vの時のバイアス電流は52.3mAです)

次に合成特性曲線をLTspiceを使って描画します。回路は下図の通りです。「プレート・カソード間電圧400Vでグリッド・カソード間電圧33Vの点」を中心に180度回転させたグラフともとのグラフの合成になります。従って、横軸のスケールは800Vになります。回路ではU1とU2を同時に動作させ、そのプレート電流を合成しています。




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下図は、得られた合成特性曲線に1.25Kオームのロードラインを引いたものです。赤の線がU1とU2の合成特性曲線、紫の線がロードラインになります。このロードラインはU1とU2を一つの真空管とみなし引かれたものになります。




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合成特性曲線とロードラインの交点も求めています。



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得られた結果から最大出力を計算します。

(400V-177.9V) X 177.7mA x 0.5 = 19.7W

参考文献にも書いてありますが、合成特性曲線で求めた最大出力は理想的なA1、AB1級プッシュプル動作を前提にしています。従って、実際のAB級動作では合成特性曲線から得られた値とは少し異なったものになると予想されます。


次にU1とU2それぞれのロードラインがどうなっているかシミュレーションしてみます。下図は回路図です。




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下図はU1とU2のロードラインを合成特性曲線の上に描画したグラフになります。




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クネクネした曲線になりました。2つを合わせると、1.25kオームのロードラインになります。バイアス0Vと交差する点のワッテージ(瞬時電力)が30Wを超えます。これはA級増幅におけるワッテージと考えられます。実際には瞬時電力を積分してプレート損失を計算します。今回はAB級動作ですから、交流電流の半分がどこでカットオフするので、30Wより小さな値になると予想されます。







参考文献:
  武末数馬「プッシュプル出力段のロードラインの求め方」、『無線と実験』1991年6月号p.114−118、誠文堂新光社

  Ayumi's Lab.: オーディオ、「夏休み特別企画 SPICEで真空管プッシュプルのロードラインを引く」、〈http://ayumi.cava.jp/audio/cm/cm.html〉

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