LTspice入門
波形の値を読み取る(.MEAS)
シミュレーションで得られたグラフ上の値を知りたいとき、下図のようにマウスカーソルを動かし枠の下の方に表示される数値を読み取ることになります。しかし、もっと正確に値を求めたいということがありますよね。そんな時に使うのが.MEAS(.MEASURE)コマンドです。
下図はLTspiceのヘルプに記されている波形読み取りコマンド(.MEAS)の説明を抜き出したものです。歪率のところでも書きましたが、”<”と”>”とで囲まれた項目は必須入力項目、”[”と”]”とで囲まれた項目は任意入力項目です
これだけでは何が何だかわからないですよね。でも安心してください。LTspiceのhelpには事例がたくさん載っているので、これを参考にすればかなりのことが理解できるようになります。
メニュー・バーの”Help"から”Help Topics”を選択します。
”キーワードを入力してください”欄に「.MEAS」と入力して”検索開始”ボタンを押し、”表示するトピックを選択してください”欄の一番上の項目をダブルクリックします。
ここでは、過渡解析で使用した2SC1815一石アンプを題材にして、実際に.MEASコマンドを使ってみましょう。下図はシミュレーション回路になります。
0msから30msまでシミュレーションしますが、10msから20ms間の出力電圧最大値と、10msから11ms間の振幅を求めます。
まず、10msから20ms間の出力電圧最大値です。
コマンドはスパイス・ディレクティブを使って設定します。ツールバーの右端の”.op”ボタンを押すかキーボードの”s”を押すと下図のEdit Text on the Schematicウインドウが開くので、ここにコマンドを書込みます。
上図はコマンドを書き入れたところです。
変数名は”V_MAX”としました。読み取った値はこの変数に代入され、Logファイルで見ることができます。
最大値を読み取る取るので指示内容に”MAX”と入力します。
ノードoutの電圧値を見たいので、対象波形は”V(out)”と入力します。
10msから20msの間を見るので、条件式は”from 10m to 20m”です。
次に出力電圧の振幅を求めます。
変数名は”V_PP”、
指示内容は”PP”、
対象波形は”V(out)”です。
条件式は”from 10m to 11m”としました。
.MEASコマンドには、煩雑な入力作業をサポートしてくれるGUIが用意されています。その使い方を説明します。
まず、Edit Text on the Schematicウインドウで”.MEAS”と入力し、これを回路図上に置きます。配置された”.MEAS”の上にマウスポインターを持っていき右クリックすると下図のような画面が開きます。この中で項目を選択、必要事項を入力していきます。
ツール・バーの”Run”をクリックするとシミュレーションがスタートします。下図は出力波形になります。
読み取った値をログファイルで確認します。ログファイルは、スキマテック(回路図)・ペインをアクティブにした状態(青いバーの色が濃くなっている方がアクティブです)で”control”キーと”L”キーを押すか、メニューバーの View から SPICE Error Log を選択して開きます。
最大値は”0.543822V”、振幅は”1.20224V”となっています。
次はAC解析の結果を、.MEASコマンドを使って見て見ましょう。2SC1815一石アンプを使います。下図がシミュレーション回路です。
1KHzのゲインと、低域の-3dB周波数と高域の-3dB周波数を求めます。
まず1KHzのゲインを求めるコマンドをスパイス・ディレクティブに書き入れます。
解析の種類は”AC”です。書かなくてもOKです。
変数名は”gain_1k”としました。
指示内容に”FIND”と入力します。
AC解析にはゲインと位相がありますが、今回はゲインが欲しいので対象波形に”magV(OUT)”と入力します。
1KHzにおけるゲインですから、条件式は”AT=1k”です。
次に低域の-3dB周波数を求めます。
解析の種類は”AC”です。
変数名は”LOW_3dB”としました。
指示内容に”WHEN”と入力します。
対象波形は”magV(OUT)”なのですが、条件式が後ろに付きます。1KHzゲインの−3dBポイントを知りたいので ”=gain_1k/sqrt(2)”と入力します。
周波数が上がっていくに連れてゲインが大きくなっていく所の波形読み取りなので、”rise=1”と付け加えます。
おしまいは高域の-3dB周波数です。
解析の種類は”AC”です。
変数名は”HIGH_3dB”としました。
指示内容に”WHEN”、対象波形は”magV(OUT)=gain_1k/sqrt(2)””と入力します。
周波数が下がっていく所の波形読み取りですから、”fall=1”と付け加えます。
ツール・バーの”Run”をクリックしてシミュレーションします。下図は出力のゲインと位相の波形になります。かなり高域が伸びています。
読み取った値をログファイルで確認します。
1KHzのゲインは”35.6716dB”、低域の-3dB周波数は”52.0275Hz”、高域の-3dB周波数は”18.2006MHz”となりました。
参考文献:
渋谷道雄、回路シミュレータLTspiceで学ぶ電子回路、オーム社 、p.258−269
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