LTspice入門
歪率とFFT解析(.FOUR)
LTspiceは歪率をシミュレーションすることができます。
過渡解析で使用した2SC1815一石アンプを使い、歪率をシミュレーションしてみましょう。
歪率は離散的フーリエ変換の結果として得られる数値になります。フーリエ変換コマンド(.FOUR)を回路図上に置いてシミュレーションします。
下図はLTspiceのヘルプに記されているフーリエ変換コマンド(.FOUR)の説明を抜き出したものです。”<”と”>”とで囲まれた項目は必須入力項目です。”[”と”]”とで囲まれた項目は任意入力項目です。
frequencyはアンプの歪率測定における発振器の周波数になります。
Nharmonicsは、基本波を含めて何次まで解析するかです。”3”と入れると基本波の他、2次と3次の歪みをシミュレーションしてくれます。
Nperiodsは、シミュレーション最期の時間からさかのぼって何周期分をフーリエ変換するかの数値です。”10”と入れれば最期の10周期分を使うことになります。”−1”と入れると全ての波形を使って解析します。
data traceは測定したいノードを入力します。複数指定することが可能ですから、アンプの1段目と2段目を一つのコマンドでシミュレーションすることもできます。
シミュレーション条件はスパイス・ディレクティブを使って設定します。ツールバーの右端の”.op”ボタンを押すかキーボードの”s”を押すと下図のEdit Text on the Schematicウインドウが開くので、ここにコマンドを書込みます。
過渡解析の設定を開きます。Stop time を100mとします。1KHzの波形100波をシミュレーションするという時間設定です。当然ですが、上記のNperiodsと同じか大きな値を入力します。
Maximum Timestep ですが、参考文献のColumnに従い、測定周波数1KHz=1msの1/10000である100nsとしました。
シミュレーションの準備が整いました。
ツール・バーの”Run”をクリックするとシミュレーションがスタートします。Maximum Timestepを小さくしたので、シミュレーションに40〜50秒ほどかかります。
(わたしの環境は、2.6GHz Intel Core i5、メモリ16GB、128GBのSSDを搭載したMacMiniで、Parallel/Windows7でLTspiceを動かしています)
下図は出力 V(OUT) の波形を表示しています。
スキマテック(回路図)・ペインをアクティブにした状態(青いバーの色が濃くなっている方がアクティブです)で”control”キーと”L”キーを押すか、メニューバーの View から SPICE Error Log を選択します。
ログ画面が表示されます。各次数ごとに値が表示されていますが、 Normalized component が歪率になります。10次の下の行に全ての次数の二乗平均値が出ています。
次はFFTです。プロット・ペインをアクティブにしてから右クリックし、ポップアップした画面から View そして FFT を選択します。
下図が開きますから V(out) を選択します。オーディオアンプの歪率をシミュレーションする場合は周期的な波形になりますから、他の項目をさわる必要はないと思います。
下図のようなFFT波形が表示されます。
得られたFFT波形ですが、高い周波数がノイジーで不自然に見えますね。これは、データが圧縮されていることにより、波形が滑らかではなくカクカクしてしまっていることが原因です。.OPTIONコマンドを使ってデータ圧縮の解除を行います。スパイス・ディレクティブを使って下図のように書き入れます。
回路図の適当なところに配置し、”Run”ボタンを押しシミュレーションを開始します。
歪率は気持ち増えたような気がします
FFTはスッキリした波形になりました。
参考文献:
渋谷道雄、回路シミュレータLTspiceで学ぶ電子回路、オーム社 、p.82−83、p.213−215、p.249−251
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