真空管アンプ電源
+460V電源 設計とシミュレーション2
ソース共通回路のゲイン特性を求めた上で、全体が安定動作するように比較増幅部の積分定数を決めていきます。
参考文献では、ソース共通回路のゲイン特性をシミュレーションで求めています。前回の原理図から分かる通り、ソース共通回路のゲインはソース側に接続されたインピーダンスとゲート側に接続されたインピーダンスとの比で決まり、FETのgmは無関係となりますからシミュレーションでも精度よく特性が求められると思います。
下図はソース共通回路のゲイン特性を求めるシミュレーション回路とその結果です。
±78V安定化電源の時と同じように、ゲインが平らになったところにクローズループゲインが1になる周波数fCを持ってきます。上図から10KHz以上であれば問題ないようです。参考文献ではfCを10KHzに設定していますが、オーディオアンプに使うということでfC=30KHzとしました。
参考文献ではバイポーラ素子をダーリントン接続していて、エミッタ共通回路のゲイン特性は負荷電流によって大きく変化すると書かれています。しかし、バイポーラトランジスタとFETをインバーテッドダーリントン接続したソース共通回路では、負荷電流を1mAから300mAまで変化させてもゲイン特性はほとんど変わりませんでした。
上図から、ソース共通回路のゲイン特性は30KHzで−15.5dBと読み取れます。よって、比較増幅部のゲインは30KHzで+15.5dBになるように調整すればよいことがわかります。積分コンデンサC2の値は18.5pFと計算されました。
下図は比較増幅部のゲイン特性を求めるシミュレーション回路とその結果です。
C2(シミュレーションの回路図ではC3)の値を2.2pFから47pFまで変化させています。
積分コンデンサC2に対するfCの値は下記の通りです。
2.2pF 48501Hz
4.7pF 39874Hz
10 pF 28958Hz
22 pF 17875Hz
47 pF 9946Hz
シミュレーションでは10pF弱という結果になり、計算値の18.5pFと異なる値です。これは、計算過程でオペアンプの利得帯域幅GBWの減少を考慮しなかったためと思われます。
積分コンデンサの値は10pFとしました。
改めて定電圧回路全体のクローズループ特性をシミュレーションしました。
当然ですが、結果はこれまでのシミュレーションで得られた特性を足し合わせたものになっています。
下図は過渡応答をシミュレーションした回路とその結果になります。
治具と合わせるため、オンオフする負荷電流は460V÷4KΩ=115mAとしています。
参考文献:
遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.158−173
本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90
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