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電源回路に使う部品その2 »

2017/03/10

電源入門
電源に使う部品

(1) トランス


最近はもっぱらフェニックス製のRコアトランスを使用しています。巻線の仕様を指定して2週間程度の短納期で仕上がってきます。価格も手頃でアマチュアには心強い存在です。

しかし問題がないわけではありません。それは唸りと鳴きが大きいことです。個体間のばらつきもあるようで、KT88用に製作した2台のうち片方は「ブーン」という低い唸り音が聴こえ、もう一方は「ジー」という鳴きの音が聞こえてきます。メーカーホームページには”うなり振動が小さい”と書かれていますが、多くの方が困っているようです。超3極管接続で有名な上条信一氏の記事にも、Rコアトランスを使って苦労した様子が書かれています。

Treasure SIT becomes a power amp

上条信一氏の製作記事には具体的な対策が書かれているものがあります。下記の記事には、商用電源のDC分を無くすDCサプレッサが使われています。また、機器間のグランドループに起因する誘導ノイズの対策方法も紹介されています。使用しているトランスはRコアではなくトロイダル型です。

2SJ200 / 2SK15292 パワーアンプ


金田式アンプ用として売られているRコアトランンスはどのような対策が施されているのか知りたいところです。


頼んだことは無いのですが、春日無線が伏せ型電源トランスの特注に応じてくれるようです。気になる容量ですが、O-BS700は200VA、O-BS1000は300VA、O-BS1500は500VAと十分です。引き出せる端子数は、それぞれ14本、16本、18本となっています。価格はRコアと比べて3〜5割増しといったところでしょうか。



Photo
フェニックス製Rコアトランス(左)とタンゴ製伏せ型トランス(右)



Photo_2
タンゴ製ヒータトランス(左)とチョークコイル(右)





(2) ヒューズ


ヒューズに求められる機能は、通常の動作では切れなくて異常時には速やかに切れることです。これをKT88アンプで使用したトランス(フェニックスRA400型)をシミュレーションして確認していきます。まずトランスの巻線仕様です。

   一次側直流抵抗 : 0.41Ω
   二次側直流抵抗 : 5.24Ω(外側)
             4.92Ω(内側)
   巻き数比    : 1.94



◯定格負荷時



Photo_4


DC負荷500mA時の一次巻線電流は4Armsです。この値で切れないヒューズが必要です。



◯起動時



Photo_5


シミュレーションでは、トランスの一次側に半波76.6Ao−pの電流が流れるという結果が出ました。これは二次側のコンデンサに流れ込む充電電流が主な成分で、トランスのB−Hカーブに起因する分は含まれていません。よって、シミュレーション結果を突入電流の全てと考えてはいけません。

実際のトランスでは電源投入時に大きな磁束密度の変化が生じ最大磁束密度をオーバーして磁気飽和を起こすことがあります。この現象は二次側がオープンでも発生します。

トランスが完全に飽和すると 141V ÷ 0.41Ω = 345A のピーク電流が流れることになります。実際にはケーブルの抵抗やコンセントの接触抵抗があるので、ピーク電流の値はもっと少なくなると考えられます。ここでは、141V ÷ 1Ω = 141A を最大値とします。半波ピーク141Aで使用し続けても劣化もしないヒューズが必要です。


注記)
LTSpiceは線形シミュレータですが、トランスのB−Hカーブを入れることができます、Webで検索すると色々出てきますので試してみると面白いと思います。ただ、トランスの磁気パラメータをどうやって測定するのかという課題は残ります。



◯負荷ショート時



Photo_6



整流出力をショートすると200App(実効値で70A)の電流が流れます。しかし、トランスのB−Hカーブによる磁気飽和の影響があり、実際にはこれより小さな値になると予想されます。従って、起動時や定格動作時に切れないことを考慮した上で、短時間で溶断するヒューズ値が必要になります。



◯溶断特性からヒューズを選択する

トランスの一次側には大きな突入電流が流れますから、速断タイプではなくタイムラグタイプのヒューズを選択しなければいけません。そして、5Aとか10Aという定格溶断電流の値だけを見るのではなく、溶断特性カーブを見て値を選択すべきです。

下図は私がよく使用する日本製線製のFSL型ガラス管ヒューズの溶断特性カーブです。



Photo_7



定格負荷時の一次巻線電流は4Arms(緑色の線)ですから、この2倍以上のマージンが必要です。電流8Aで切れないということで選択すると、ヒューズ定格は4A以上必要であると読み取れます。


負荷ショート時に70Aで1秒以内に切れるという条件には全ての定格値が当てはまります(赤の線)。他の条件が許すならば、ヒューズ定格はできるだけ小さな値を選択すべきです。


起動時の突入電流については溶断特性カーブ(オレンジ色の線)から判断してはいけないということになっています。電流二乗時間積(I2t)の25%以内で使うこと、と日本製線のカタログに書いてあります。141A半波(60Hzで8.3ms)のI2tは、0.5X141X141X0.0083=82.3です。しかし、日本製線のカタログに規格値は書いてなくて、”営業にお問い合わせください”になっています。仕方ないので、Digi-Keyで5X20mmの10Aガラス管タイムラグヒューズを5種類ほど調べたところ、その値は400から568でした。10Aのヒューズであれば、I2tの25%以内で使うことができそうな気がします。しかし、イレギュラー時に確実に切れることを考えると、8Aもしくは6.3Aを選択した方が良いかもしれません。



Fsl
日本製線製のFSL型10Aガラス管ヒューズ



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