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2017/03/17

電源入門
電源回路に使う部品その2

(3) 線材

屋内で交流 300V 以下の小形電気器具に使用する電線にはVSF、HVSFがありJIS C 3306で規定されています。
市販されているVSFケーブルの導体サイズは0.5sqからがほとんどですが、探せば0.3sqもあるようです。
VSF電線の定格温度は60℃ですが、HVSFは105℃品となっています。


600V 以下の主に電気機器の配線に用いる電線にはKIV、HKIVがありJIS C 3316で規定されています。
メーカカタログの導体サイズは0.5sqからのようですが、販売店で見かけるのは太いものが多いです。


電線に関してはUL品に絶対の信頼を寄せている方も多いと思います。また、金や銀その他の音が良くなると言われる材質にこだわったり、音のよくなる方向があるという意見があったりと話題に事欠きません。


私はというと、入手性と色の多さから300VのVSF電線と600VのUL1015電線をを使っています。VSF電線はメッキなしでUL1015電線はメッキありです。メッキの有無を気にされる方もいらっしゃるようですが、私は気にしていません。それより配線がしやすい屈曲性だったり、高温がかかっても丈夫な被覆だったりの方が大切と思います。ただ、メッキ線の方が半田付けしにくいです。予備はんだをする際にちゃんとはんだが付いているか確認しづらいですし、芋半田になっていることも時々あります。メッキなしの電線より半田ごての温度を高めした方が良いようです。



Photo
ダイエイ電線のVSF電線


Ul
協和ハーモネットのUL1015電線



(4) コネクタ


商用電源の引き込みにはIECインレットタイプのコネクタを使います。以前は雑誌記事の評論を見てフルテック製を使っていたのですが、半田付けの際に熱変形してケーブルの抜き差しが固くなるということがあり、現在はオヤイデ電気製の174−Rという熱変形しにくい製品を使っています。



Photo_2
オヤイデ電気製IECインレット 174−R




古い製作記事で、商用電源の引き込みにキャノンタイプのコネクタを使ったものを見たことがあります。キャノンタイプのコネクタの仕様は下記の通りで、定格電圧を見る限り使うことは可能なようです。

 2ピン     : 定格電圧 200 VAC
             耐電圧   1600 VAC
 3〜7ピン : 定格電圧 133 VAC
            耐電圧   1400 VAC


次にB電源を接続できるようなコネクタですが、入手性の良いヒロセのHR10シリーズを見てみます。シェルサイズ7の製品仕様は下記の通りです。定格電圧が低くて、使うのは難しいです。

 4ピン   : 定格電圧 150 VAC 200 VDC
           耐電圧    300 VAC


カタログを色々見ていったのですが、防水タイプのコネクタに定格電圧の高い製品があるのを見つけました。KT88ULアンプでは航空電子のN/MS−A/Bシリーズを使いました。シェルサイズ12Sの仕様は下記の通りです。

 2ピン   : 定格電圧 500 VAC 700 VDC
           耐電圧   2000 VAC

防水タイプのコネクタはサイズが大きくて価格もそれなりなのですが、取り扱う電圧が高い場合には安心して使えます。
ちなみに、耐電圧は瞬間的(多くは1分間)に耐えられる電圧ということであって、連続的に印加してよい電圧ではありません。



Photo_3
航空電子のN/MS−A/Bシリーズ シェルサイズ12S




(5) 基準電圧


基準電圧としてはツェナーダイオード、電流源としては定電流ダイードが一般的です。



Photo_4
ツェナーダイオード1N4733(左)と定電流ダイオードE−102(右)



ツェナーダイオードを使う際に注意する点は、参考文献にあるように以下の3点です。

 ・温度係数 
 ・動作抵抗
 ・雑音電圧

5〜6Vより下の電圧では負の温度係数を持つツェナー降伏が支配的で、上の電圧ではアバランシェ降伏が支配的です。従って、温度特性を第一に考えるならば5.1V品か5.6V品を使うのがよいと思います。

電圧の安定性に大切な動作抵抗は、流す電流によって変化するようですが、6〜7Vにおいて最小となります。動作抵抗を最小にしたいときは、6.2V品か6.8V品を使うのがよいと思います。

ノイズはアバランシェ降伏によって発生しますから、ノイズを最優先に考えるならばツェナー降伏が支配的な低い電圧値を選ぶべきです。ノイズを取るためにコンデンサをパラ接続することがよくあります。コンデンサパラ接続よりも、できればCRフィルタにしたいところです。


定電流回路はトランジスタやFETを使っても構成できますが、石塚電子の定電流ダイオードを使うと部品点数が削減できます。最高使用電圧が規定されていますからこれを超えないようにすることと、定格電力にマージンを持った使い方をすることに注意しましょう。


ツェナーダイオード以上の精度と安定性を求めるのであれば、基準電圧ICを使う方法があります。



Ad587
AD587(左)とマイナス基準電圧の作り方(右)



上の写真は10Vの基準電圧IC、AD587です。レーザ・トリミングされていて非常に高精度で温度安定性の高い石となっています。これほどの性能が必要ない場合、数分の一の価格でピンコンパチ品が色々あります。
販売されている基準電圧用ICはほとんどがプラス電圧出力になっています。マイナスの基準電圧が欲しいときには上図右の方法を採用するとよいでしょう。





参考文献:
  黒田徹、初めてのトランジスタ回路設計、CQ出版、1999、p.202−203
  本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.69−70




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