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2017年3月

2017/03/31

真空管アンプ電源
 ±78V電源 設計

KT88プッシュプルアンプの電源を再製作しました。

B電源は+460V、
電圧増幅段用は±78Vと±15Vで、全てオペアンプを用いた回路です。

尚、これらの電源は遠坂俊昭氏の「電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計」を参考にして設計したものです。


下図は安定化電源回路の原理図です。



Photo_6



比較増幅部は基準電圧Vrefと出力電圧Voutを比較/増幅し、エミッタフォロア部を制御します。

下図は、実際に使用する回路をもとにしてより具体的に説明した図です。



Photo_2



比較増幅部はオペアンプとR1、R2、C3で構成されています。これは図の左下で表したように積分回路として動作します。

エミッタフォロア部はTR1とTR2がダーリントン接続され、過電流保護回路を介して出力コンデンサC1に接続されています。

過電流保護回路は、負荷電流が大きくなりR3両端の電圧が0.6Vを越えるとTR3がオンし、TR1とTR2をカットオフします。

これらは図の右下で表したように抵抗(エミッタフォロアの出力抵抗Ro+過電流検出抵抗R3+コンデンサの等価直列抵抗Rc1)とコンデンサC1の直列回路として動作します。


下図は比較増幅部のゲイン特性とエミッタフォロア部のゲイン特性を図示したものです。



Photo_3



比較増幅部のゲインは、−20dB/decで減衰します。
エミッタフォロア部は周波数fAとfBの間のみ−20dB/decで減衰し他の領域はフラットです。
比較増幅部のゲインとエミッタフォロア部のゲインを足し合わせたものがクローズループゲインとなり、周波数fAとfBの間は−40dB/decで減衰し、fB以降は−20dB/decで減衰します。

図には書きませんでしたが、エミッタフォロア部の位相はfBまで遅れていきますが、それより上の周波数で戻って(進んで)きます。従って、比較増幅部とエミッタフォロア部を足し合わせたクローズループゲインが1になる周波数fCは、位相余裕を大きく取るためにfBより上に持ってくるのがベターです。参考文献には、fCはfBの3倍以上と書かれています。


下図は今回製作した±78V電源の回路図になります。設計出力電流は100mAとしました。



Photo_4



ダーリントン接続したエミッタフォロアの出力抵抗Roは0.33Ωと計算されました。
エミッタフォロアの出力抵抗算出式は後の方に載せました。

過電流検出抵抗R3は2.2Ωです。

出力コンデンサには日本ケミコンのKMGシリーズを使いました。100V470μFの等価直列抵抗Rc1を0.2Ωとしています。

これらの条件から、fA=124Hz、fB=1690Hzが求まります。

fCは参考文献に従い30KHzとします。


この後、比較増幅部の抵抗とコンデンサの値を求めていきます。
計算方法は参考文献に詳しく解説されていますので参考にしてください。

上記回路では、プラス側C1=8.6pF、マイナス側C2=12.4pFと計算されました。
両者とも10pFを使用することとします。


ここまで説明した以外のところですが、
定電流ダイオードはダーリントン接続した1段目トランジスタのベース電流を供給しています。抵抗ではなく定電流ダイオードを使っているのは、電源入力に含まれるリップル分の影響をできるだけ小さくするためですが、ダーリントン接続しているのであまり意味がないかもしれません。

±78V電源出力短絡時はオペアンプから過電流保護回路のトランジスタを通って出力方向に電流が流れます。オペアンプ出力も短絡されたのと等価になります。オペアンプの電源は外部から取っているため、出力短絡時には過大な電流が流れる危険があります。オペアンプを保護する目的で出力に620Ωを入れています。

620Ωの後にツェナーダイオードが入っていますが、これはオペアンプ出力電圧をかさ上げするために必要になります。

マイナス電源はプラス電源の出力を基準に動作するトラッキング電源としています。



下図は、エミッタフォロア出力抵抗の算出方法を示したものです。



Photo_5



参考文献:
  遠坂俊昭、電子回路シミュレータSIMetrix/SIMPLISによる高性能電源回路の設計、CQ出版、2013、p.86−108、p.130−136
  本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.52−90




2017/03/17

電源入門
電源回路に使う部品その2

(3) 線材

屋内で交流 300V 以下の小形電気器具に使用する電線にはVSF、HVSFがありJIS C 3306で規定されています。
市販されているVSFケーブルの導体サイズは0.5sqからがほとんどですが、探せば0.3sqもあるようです。
VSF電線の定格温度は60℃ですが、HVSFは105℃品となっています。


600V 以下の主に電気機器の配線に用いる電線にはKIV、HKIVがありJIS C 3316で規定されています。
メーカカタログの導体サイズは0.5sqからのようですが、販売店で見かけるのは太いものが多いです。


電線に関してはUL品に絶対の信頼を寄せている方も多いと思います。また、金や銀その他の音が良くなると言われる材質にこだわったり、音のよくなる方向があるという意見があったりと話題に事欠きません。


私はというと、入手性と色の多さから300VのVSF電線と600VのUL1015電線をを使っています。VSF電線はメッキなしでUL1015電線はメッキありです。メッキの有無を気にされる方もいらっしゃるようですが、私は気にしていません。それより配線がしやすい屈曲性だったり、高温がかかっても丈夫な被覆だったりの方が大切と思います。ただ、メッキ線の方が半田付けしにくいです。予備はんだをする際にちゃんとはんだが付いているか確認しづらいですし、芋半田になっていることも時々あります。メッキなしの電線より半田ごての温度を高めした方が良いようです。



Photo
ダイエイ電線のVSF電線


Ul
協和ハーモネットのUL1015電線



(4) コネクタ


商用電源の引き込みにはIECインレットタイプのコネクタを使います。以前は雑誌記事の評論を見てフルテック製を使っていたのですが、半田付けの際に熱変形してケーブルの抜き差しが固くなるということがあり、現在はオヤイデ電気製の174−Rという熱変形しにくい製品を使っています。



Photo_2
オヤイデ電気製IECインレット 174−R




古い製作記事で、商用電源の引き込みにキャノンタイプのコネクタを使ったものを見たことがあります。キャノンタイプのコネクタの仕様は下記の通りで、定格電圧を見る限り使うことは可能なようです。

 2ピン     : 定格電圧 200 VAC
             耐電圧   1600 VAC
 3〜7ピン : 定格電圧 133 VAC
            耐電圧   1400 VAC


次にB電源を接続できるようなコネクタですが、入手性の良いヒロセのHR10シリーズを見てみます。シェルサイズ7の製品仕様は下記の通りです。定格電圧が低くて、使うのは難しいです。

 4ピン   : 定格電圧 150 VAC 200 VDC
           耐電圧    300 VAC


カタログを色々見ていったのですが、防水タイプのコネクタに定格電圧の高い製品があるのを見つけました。KT88ULアンプでは航空電子のN/MS−A/Bシリーズを使いました。シェルサイズ12Sの仕様は下記の通りです。

 2ピン   : 定格電圧 500 VAC 700 VDC
           耐電圧   2000 VAC

防水タイプのコネクタはサイズが大きくて価格もそれなりなのですが、取り扱う電圧が高い場合には安心して使えます。
ちなみに、耐電圧は瞬間的(多くは1分間)に耐えられる電圧ということであって、連続的に印加してよい電圧ではありません。



Photo_3
航空電子のN/MS−A/Bシリーズ シェルサイズ12S




(5) 基準電圧


基準電圧としてはツェナーダイオード、電流源としては定電流ダイードが一般的です。



Photo_4
ツェナーダイオード1N4733(左)と定電流ダイオードE−102(右)



ツェナーダイオードを使う際に注意する点は、参考文献にあるように以下の3点です。

 ・温度係数 
 ・動作抵抗
 ・雑音電圧

5〜6Vより下の電圧では負の温度係数を持つツェナー降伏が支配的で、上の電圧ではアバランシェ降伏が支配的です。従って、温度特性を第一に考えるならば5.1V品か5.6V品を使うのがよいと思います。

電圧の安定性に大切な動作抵抗は、流す電流によって変化するようですが、6〜7Vにおいて最小となります。動作抵抗を最小にしたいときは、6.2V品か6.8V品を使うのがよいと思います。

ノイズはアバランシェ降伏によって発生しますから、ノイズを最優先に考えるならばツェナー降伏が支配的な低い電圧値を選ぶべきです。ノイズを取るためにコンデンサをパラ接続することがよくあります。コンデンサパラ接続よりも、できればCRフィルタにしたいところです。


定電流回路はトランジスタやFETを使っても構成できますが、石塚電子の定電流ダイオードを使うと部品点数が削減できます。最高使用電圧が規定されていますからこれを超えないようにすることと、定格電力にマージンを持った使い方をすることに注意しましょう。


ツェナーダイオード以上の精度と安定性を求めるのであれば、基準電圧ICを使う方法があります。



Ad587
AD587(左)とマイナス基準電圧の作り方(右)



上の写真は10Vの基準電圧IC、AD587です。レーザ・トリミングされていて非常に高精度で温度安定性の高い石となっています。これほどの性能が必要ない場合、数分の一の価格でピンコンパチ品が色々あります。
販売されている基準電圧用ICはほとんどがプラス電圧出力になっています。マイナスの基準電圧が欲しいときには上図右の方法を採用するとよいでしょう。





参考文献:
  黒田徹、初めてのトランジスタ回路設計、CQ出版、1999、p.202−203
  本多平八郎、作りながら学ぶエレクトロニクス測定器、CQ出版社、2001、p.69−70




2017/03/10

電源入門
電源に使う部品

(1) トランス


最近はもっぱらフェニックス製のRコアトランスを使用しています。巻線の仕様を指定して2週間程度の短納期で仕上がってきます。価格も手頃でアマチュアには心強い存在です。

しかし問題がないわけではありません。それは唸りと鳴きが大きいことです。個体間のばらつきもあるようで、KT88用に製作した2台のうち片方は「ブーン」という低い唸り音が聴こえ、もう一方は「ジー」という鳴きの音が聞こえてきます。メーカーホームページには”うなり振動が小さい”と書かれていますが、多くの方が困っているようです。超3極管接続で有名な上条信一氏の記事にも、Rコアトランスを使って苦労した様子が書かれています。

Treasure SIT becomes a power amp

上条信一氏の製作記事には具体的な対策が書かれているものがあります。下記の記事には、商用電源のDC分を無くすDCサプレッサが使われています。また、機器間のグランドループに起因する誘導ノイズの対策方法も紹介されています。使用しているトランスはRコアではなくトロイダル型です。

2SJ200 / 2SK15292 パワーアンプ


金田式アンプ用として売られているRコアトランンスはどのような対策が施されているのか知りたいところです。


頼んだことは無いのですが、春日無線が伏せ型電源トランスの特注に応じてくれるようです。気になる容量ですが、O-BS700は200VA、O-BS1000は300VA、O-BS1500は500VAと十分です。引き出せる端子数は、それぞれ14本、16本、18本となっています。価格はRコアと比べて3〜5割増しといったところでしょうか。



Photo
フェニックス製Rコアトランス(左)とタンゴ製伏せ型トランス(右)



Photo_2
タンゴ製ヒータトランス(左)とチョークコイル(右)





(2) ヒューズ


ヒューズに求められる機能は、通常の動作では切れなくて異常時には速やかに切れることです。これをKT88アンプで使用したトランス(フェニックスRA400型)をシミュレーションして確認していきます。まずトランスの巻線仕様です。

   一次側直流抵抗 : 0.41Ω
   二次側直流抵抗 : 5.24Ω(外側)
             4.92Ω(内側)
   巻き数比    : 1.94



◯定格負荷時



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DC負荷500mA時の一次巻線電流は4Armsです。この値で切れないヒューズが必要です。



◯起動時



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シミュレーションでは、トランスの一次側に半波76.6Ao−pの電流が流れるという結果が出ました。これは二次側のコンデンサに流れ込む充電電流が主な成分で、トランスのB−Hカーブに起因する分は含まれていません。よって、シミュレーション結果を突入電流の全てと考えてはいけません。

実際のトランスでは電源投入時に大きな磁束密度の変化が生じ最大磁束密度をオーバーして磁気飽和を起こすことがあります。この現象は二次側がオープンでも発生します。

トランスが完全に飽和すると 141V ÷ 0.41Ω = 345A のピーク電流が流れることになります。実際にはケーブルの抵抗やコンセントの接触抵抗があるので、ピーク電流の値はもっと少なくなると考えられます。ここでは、141V ÷ 1Ω = 141A を最大値とします。半波ピーク141Aで使用し続けても劣化もしないヒューズが必要です。


注記)
LTSpiceは線形シミュレータですが、トランスのB−Hカーブを入れることができます、Webで検索すると色々出てきますので試してみると面白いと思います。ただ、トランスの磁気パラメータをどうやって測定するのかという課題は残ります。



◯負荷ショート時



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整流出力をショートすると200App(実効値で70A)の電流が流れます。しかし、トランスのB−Hカーブによる磁気飽和の影響があり、実際にはこれより小さな値になると予想されます。従って、起動時や定格動作時に切れないことを考慮した上で、短時間で溶断するヒューズ値が必要になります。



◯溶断特性からヒューズを選択する

トランスの一次側には大きな突入電流が流れますから、速断タイプではなくタイムラグタイプのヒューズを選択しなければいけません。そして、5Aとか10Aという定格溶断電流の値だけを見るのではなく、溶断特性カーブを見て値を選択すべきです。

下図は私がよく使用する日本製線製のFSL型ガラス管ヒューズの溶断特性カーブです。



Photo_7



定格負荷時の一次巻線電流は4Arms(緑色の線)ですから、この2倍以上のマージンが必要です。電流8Aで切れないということで選択すると、ヒューズ定格は4A以上必要であると読み取れます。


負荷ショート時に70Aで1秒以内に切れるという条件には全ての定格値が当てはまります(赤の線)。他の条件が許すならば、ヒューズ定格はできるだけ小さな値を選択すべきです。


起動時の突入電流については溶断特性カーブ(オレンジ色の線)から判断してはいけないということになっています。電流二乗時間積(I2t)の25%以内で使うこと、と日本製線のカタログに書いてあります。141A半波(60Hzで8.3ms)のI2tは、0.5X141X141X0.0083=82.3です。しかし、日本製線のカタログに規格値は書いてなくて、”営業にお問い合わせください”になっています。仕方ないので、Digi-Keyで5X20mmの10Aガラス管タイムラグヒューズを5種類ほど調べたところ、その値は400から568でした。10Aのヒューズであれば、I2tの25%以内で使うことができそうな気がします。しかし、イレギュラー時に確実に切れることを考えると、8Aもしくは6.3Aを選択した方が良いかもしれません。



Fsl
日本製線製のFSL型10Aガラス管ヒューズ



2017/03/03

電源入門
スイッチングレギュレータの製作例

ロボット競技のお手伝いした時に製作したDC−DCコンバータを紹介します。電池から昇圧型コンバータを使って+16Vを得、その後段の降圧型コンバータで+5Vを得ています。



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使用しているICはTIのMC33063で、降圧用にも昇圧用にも使える便利な石です。しかし、内蔵されているスイチング素子はバイポーラで外部のダイオードは同期制御していません。スイッチング周波数は100KHzと現在の水準から見ると低めです。電源としての性能はそこそこでした。

記憶がはっきりしていないのですが、DIP8ピンのパッッケージがあって作りやすいことと動作電圧範囲が広いこと、入手性がよく安価なことが採用の決め手になったと思います。



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昇圧回路



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降圧回路



入力を10Vとし、+5V電源に負荷をかけた時の電圧変動と両電源トータルの効率をプロットしたのが下図になります。トータルの効率は60%台になっていますが、+16V電源、+5V電源それぞれの効率は80%台です。電圧変動は、ロボット用なのでこれで十分だと思います。



Photo_4
電圧変動



負荷電流を100mAとし、入力電圧に対する出力電圧の変動をプロットしたのが下図です。電池駆動なので電圧低下に対してどこまで耐えられるかを試験しました。+5Vは+16Vの後に配置されているので、データとしては意味がありません。入力電圧が2.6Vでもちゃんと動作するのには驚きました。



Photo_5
最低動作電圧




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