電源入門
シャントレギュレータとシリーズレギュレータ
安定化回路にはシャントレギュレータとシリーズレギュレータとがあります。
シャントレギュレータは制御素子が負荷と並列に接続され、シリーズレギュレータは制御素子が負荷と直列に接続されるという違いです。
(1)シャントレギュレータ
シャントレギュレータは制御素子の電力消費が大きくなりがちで、負荷電流が小さな回路や基準電圧源として使われます。もっとも代表的な素子にTL431があります。
この石は外部に抵抗を接続することで2.5Vから36Vの任意の出力電圧を得ることができます。また電圧精度も0.5%〜2%と高いので基準電圧源として使うことができます。
大概のシャントレギュレータは最小動作電流が規定されています。TL431の場合は1mAです。また、出力にコンデンサを並列接続する時のために安全動作する領域がグラフで示されています。これらの条件を満足しない場合、発振する可能性があります。
(2)シリーズレギュレータ
シリーズレギュレータですが、比較増幅器にトランジスタやFET等のディスクリート素子を使う回路とオペアンプを使う回路とがあります。ディスクリート素子を使ってもオペアンプを使っても負帰還回路である事にかわりはありません。安定性には十分配慮すべきです。
ディスクリート型の良い点は、扱う電圧が高くなっても外部電源が不要であるという事です。一話完結型の回路は大変魅力があります。ただ、レギュレータの特性(出力インピーダンスや安定性など)は使う素子のばらつきによって変化するという点に注意しなければいけません。回路構成や部品の選択には気を使う必要があると思います。
ここでは、参考文献に載っているシリーズレギュレータを題材として動作の解析とシミュレーションを行いたいと思います。
上図の左側は参考文献掲載の回路図です。動作を理解しやすくするために簡略化したのが右側の回路図です。回路図の下に示した計算式から分かるように、電源の特性を良くするにはQ1を中心とした比較増幅器のゲインを大きくする事が必要です。
安定性をシミュレーションした結果が下図になります。
Q3のコレクターとQ4のコレクターの間に信号源を配し、そのマイナス側とプラス側の比をプロットしたものがループゲインのボーデ線図(上図)になります。ループゲインがゼロになるのは22.7KHzで、そのときの位相余裕は95degでした。安定な回路だと言えます。この回路は、Q3のコレクタ・ベース間に入っている位相補償コンデンサと出力コンデンサの内部抵抗が安定性の肝となっています。
バイポーラトランジスタのモデルは遠坂俊昭氏の「電子回路シミュレータLTspice実践入門」のCD−ROMに入っていた物を使いました。
参考文献は、レギュレータ回路だけでなく超低歪率発振器など興味深い回路が満載です。ぜひ、購入してクラフトオーディオの役にたてていただきたいと思います。
参考文献:
黒田徹、初めてのトランジスタ回路設計、CQ出版、p.199−226
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