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2017年2月

2017/02/24

電源入門
スイッチングレギュレータ

オーディオ装置や測定器等一部の例外を除いて、近年はほとんどの機器にスイッチングレギュレータが使われています。私はロボット競技をお手伝いした時に少しだけかじった経験があります。スイッチング電源というととっつきにくい印象ですが、回路や電子部品を深く知る上でとても良い教材だと思います。

スイッチング電源の分類ですが、基本的にAC−DCコンバータとDC−DCコンバータの2種類に分けられます。



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AC−DCコンバータはAC入力を整流してDCにする回路とスイッチングコンバータから構成されます。我々が使う用途では、AC入力とは商用電源の100Vまたは200Vのことです。テーブルタップの上を占拠している"ACアダプター"もAC−DCコンバータです。

DC−DCコンバータはスイッチングコンバータのみです。電池で動作する機器や自動車に搭載される機器には必須の電源となっています。また、最近のコンピュータではCPUやGPUが高速大電力なため素子の近くにPOL(Point of Load)レギュレータという専用のDC−DCコンバータが置かれています。


次にスイッチングコンバータの方式ですが、大きく分けて以下の4種類です。

 ・降圧型コンバータ
 ・昇圧型コンバータ
 ・フライバックコンバータ
 ・フォワードコンバータ

前二つは非絶縁タイプ、後二つは絶縁タイプです。いずれの方式でもトランジスタやFETがスイッチとして使われていて、そのオンオフの周波数は数10KHz〜数MHzの可聴帯域外となっています。トランスは流す電流の周波数が高いほどコアの断面積が小さくて済むため、電流容量の割にサイズが小さいという印象を持たれると思います。



下図は降圧型コンバータを説明したものです。

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下図は昇圧型コンバータを説明したものです。

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下図はフライバックコンバータを説明したものです。

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下図はフォワードコンバータを説明したものです。

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アマチュアにも製作できるのはDC−DCコンバータです。AC−DCコンバータはお勧めできません。

理由の第一は、周囲にノイズを撒き散らかす危険があるからです。

ノイズには、電磁波(放射ノイズ)と電源ケーブルを伝って出てくるノイズ(伝導ノイズ)の二つがあります。発生するノイズの量をこれ以下にしなさいという規制があり、これをEMI(電磁妨害放射規制)と言っています。

一方、受ける方にも規制がありEMS(電磁妨害耐量)と言っています。

EMSに則っている機器は、EMIで規定された規格を守っている機器が近くに来ても誤動作しないということですね。

これらの規制は、米国ではFCC(米国連邦通信委員会)が定める国家ルールですが、日本ではVCCI(情報処理装置等電波障害自主規格協議会)という団体が策定する自主規制ルールです。

しかし、自作のAC−DCコンバータがこれらの規制値を守ることはまず不可能です。家族や近所からテレビやラジオに雑音が入るといったクレームが来るかもしれません。


二番目の理由は、商用電源に直接つながる回路なので危険が大きいということです。家のブレーカが飛んだり感電したりという事も考えられます。




参考文献:
  岡山努、スイッチングコンバータ回路入門、日刊工業新聞社



2017/02/17

電源入門
シャントレギュレータとシリーズレギュレータ

安定化回路にはシャントレギュレータとシリーズレギュレータとがあります。



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シャントレギュレータは制御素子が負荷と並列に接続され、シリーズレギュレータは制御素子が負荷と直列に接続されるという違いです。




(1)シャントレギュレータ

シャントレギュレータは制御素子の電力消費が大きくなりがちで、負荷電流が小さな回路や基準電圧源として使われます。もっとも代表的な素子にTL431があります。


この石は外部に抵抗を接続することで2.5Vから36Vの任意の出力電圧を得ることができます。また電圧精度も0.5%〜2%と高いので基準電圧源として使うことができます。


大概のシャントレギュレータは最小動作電流が規定されています。TL431の場合は1mAです。また、出力にコンデンサを並列接続する時のために安全動作する領域がグラフで示されています。これらの条件を満足しない場合、発振する可能性があります。



Tl431



(2)シリーズレギュレータ

シリーズレギュレータですが、比較増幅器にトランジスタやFET等のディスクリート素子を使う回路とオペアンプを使う回路とがあります。ディスクリート素子を使ってもオペアンプを使っても負帰還回路である事にかわりはありません。安定性には十分配慮すべきです。


ディスクリート型の良い点は、扱う電圧が高くなっても外部電源が不要であるという事です。一話完結型の回路は大変魅力があります。ただ、レギュレータの特性(出力インピーダンスや安定性など)は使う素子のばらつきによって変化するという点に注意しなければいけません。回路構成や部品の選択には気を使う必要があると思います。


ここでは、参考文献に載っているシリーズレギュレータを題材として動作の解析とシミュレーションを行いたいと思います。



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上図の左側は参考文献掲載の回路図です。動作を理解しやすくするために簡略化したのが右側の回路図です。回路図の下に示した計算式から分かるように、電源の特性を良くするにはQ1を中心とした比較増幅器のゲインを大きくする事が必要です。


安定性をシミュレーションした結果が下図になります。



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シミュレーション回路


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安定性のシミュレーション結果



Q3のコレクターとQ4のコレクターの間に信号源を配し、そのマイナス側とプラス側の比をプロットしたものがループゲインのボーデ線図(上図)になります。ループゲインがゼロになるのは22.7KHzで、そのときの位相余裕は95degでした。安定な回路だと言えます。この回路は、Q3のコレクタ・ベース間に入っている位相補償コンデンサと出力コンデンサの内部抵抗が安定性の肝となっています。


バイポーラトランジスタのモデルは遠坂俊昭氏の「電子回路シミュレータLTspice実践入門」のCD−ROMに入っていた物を使いました。




参考文献は、レギュレータ回路だけでなく超低歪率発振器など興味深い回路が満載です。ぜひ、購入してクラフトオーディオの役にたてていただきたいと思います。



参考文献:
  黒田徹、初めてのトランジスタ回路設計、CQ出版、p.199−226

2017/02/10

電源入門
整流回路

主な整流回路3種類を紹介したいと思います。

(1) ブリッジ整流回路

両波整流回路の一種です。
EL84ppアンプのB電源整流回路をシミュレーションしました。
電源トランスは、フェニックスのRA150タイプです。
負荷電流は100mAとしています。




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シミュレーション回路


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起動時の出力電圧(赤)とトランス二次側電流(青)


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安定時の出力リップル電圧(赤)とコンデンサ電流(青)




まずダイオードに流れるピーク電流を把握し、「尖頭順サージ電流」の絶対最大定格がピーク電流を上回っている事を確認します。起動時、トランスに流れる電流(=ダイオードに流れる電流)のピーク値は7.5Aに達しています。整流電圧が安定すると0.6Aに減少しますから、起動時の電流は定常時の10倍を超える大きな値になっている事がわかります。


ブリッジ整流回路では、ダイオードのアノード/カソード間に印加されるピーク電圧がトランス定格電圧の1.4倍になります。「尖頭逆方向電圧」の絶対最大定格は、商用電源の電圧変動やアンプ内の負荷変動を考慮して、トランス定格電圧の2倍以上欲しいところです。


出力電圧が安定した後の電流は、ピーク値0.6A、実効値0.2Arms弱になりました。DCの負荷を0.1Aとっていますから、トランスにはDC値の倍の電流が流れていることになります。ブリッジ整流のDC電流はトランスAC定格電流の60%程度取れると一般に言われていますが、シミュレーションでは約50%という結果になりました。この割合はトランスの巻線仕様で変わってきますから、実際に確認されるのがよいと思います。


ダイオードに流れる電流と「順方向電圧」をもとに熱計算を行い、ジャンクション温度に対してマージンがあるか確認します。ヒータ電源以外では流れる電流が数百mA以下なので、よほど小型のダイオードを使わない限り電力損失による発熱が問題になる事はないと思います。


さらに、コンデンサの「定格リップル電流」に対してマージンがあるかどうかも確認します。コンデンサに流れる電流ははダイオード側から流れ込む電流と負荷側に流れ出す電流の和になります。上図の場合、コンデンサに流れる電流の実効値は190mAでした。コンデンサに電流が流れると内部の抵抗分によって電力損失が発生し発熱します。電解コンデンサは寿命品で、電流による自己発熱と周囲温度が影響します。家庭で使う限り24時間通電しっぱなしということはないでしょうが、高温の真空管近くに置かれたりもしますから自己発熱はできるだけ少ない方がよいと思います。


リップル電圧は3.3Vppもあり、このままではハム音に悩まされる事になると思います。後段に何らかのフィルター回路、もしくは安定化回路が必要です。




(2) 半波整流回路

ACサイクルの半分しか使わないので効率の悪い整流方式です。
真空管アンプ用の電源トランスでは、C電源巻線とB電源巻線とが共通のコモン端子で構成されている事が多く、C電源の整流回路でよく使われています。

(1)のトランスで半坡整流回路をシミュレーションしてみました。



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シミュレーション回路


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起動時の出力電圧(赤)とトランス二次側電流(青)


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安定時の出力リップル電圧(赤)とコンデンサ電流(青)



起動時に流れる電流のピーク値はブリッジ整流回路と同じですが、ACの半部しか使っていないので出力電圧の立ち上がりが遅くなっています。


リップル電圧は7.2Vp-pと大きな値となりました。整流用のコンデンサ容量を220μFから470μFに増やした時の結果が下図になります。リップル電圧は3.1Vp-pに減少しました。このことから、半波整流回路のリップル電圧を両波整流回路と同じにするには、整流用コンデンサの値を倍にすればよい事が分かります。




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(3) 両波整流回路

一般的なB電源回路では、ダイオード2本を使ってプラス電圧を得る回路構成になります。ダイオードを4本使ったブリッジ構成にすると、コモン端子に対して正負の整流電圧を得る事ができます。コモン端子を出力として用いなければ、KT88ULアンプで使った倍電圧整流回路になります。


KT88ULアンプに使用したB電源用の倍電圧整流回路をシミュレーションしました。
電源トランスは、フェニックスのRA400タイプです。
負荷電流は100mAとしています。



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シミュレーション回路



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起動時の出力電圧(赤)とトランス二次側電流(青)



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安定時の出力リップル電圧(赤)とコンデンサ電流(青)



起動時のピーク電流は19Aです。実際に使用したダイオードはロームのSCS105KGで「尖頭順サージ電流」の絶対最大定格は60Hz半波で21A、ギリギリですね。


両波整流回路では、ダイオードに印加される電圧はトランスの定格電圧の約2.8倍になります。「尖頭逆方向電圧」の絶対最大定格はトランス定格電圧の3倍以上欲しいところです。
使ったトランスの定格電圧は185Vなので、ダイオードの両端には523Vがかかるはずです。シミュレーションでは、ダイオードの両端に540Vかかるという結果になっています。SCS105KGの「尖頭逆方向電圧」は1200Vなので十分な値です。


リップル電圧は2Vp-pとなりました。



下の写真はKT88ULアンプに使用した倍電圧整流基板です。




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整流回路に使われるダイオードとコンデンサについて復習です。


◯ダイオード
  ・逆方向回復時間
     ノイズの発生量に(音質にも?)関係します
     ショットキー等の高速タイプを使った方がよいです
  ・尖頭逆方向電圧
     整流方式によって必要な耐圧が違ってきます
  ・尖頭順サージ電流
     起動時にはチャージゼロのコンデンサとトランスがダイオードでショートされ
     大きな電流が流れます
  ・順方向電圧
     電力損失を計算するときに必要です

◯コンデンサ
  ・定格電圧
     一次側の電圧変動やチョークコイルを使ったときの電圧振動も考慮します
     瞬時最大印加電圧が規定されている製品もあります
  ・定格リップル電流
     コンデンサの充放電電流の規格ですが、寿命に大きく影響します



近年、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を応用したショットキーダイオードが製品化されるようになりました。これらのダイオードは高速でリカバリー時間が短いため、低損失でスイッチングノイズの小さな回路が実現できます。さらに、耐熱温度も高いので熱設計が楽になり筐体を小型化できる可能性があります。


オーディオ関係でも使用例が増えてきましたが、多くは現代社会で活躍する産業用機器(スイッチング電源やインバータ)で使われています。スイッチング電源やインバータ器機は目的の電圧や電流を得るためにPWM制御が行われており、そのため電流や電圧が高速でスイッチング(ON/OFF)しています。電流が流れるルートに入るダイオードは、機器の性能とりわけノイズ量や電力損失に大きく影響してくる重要な部品の一つです。





参考文献:
  戸川治郎、実用電源回路設計ハンドブック、CQ出版、p.14−27

2017/02/03

電源入門
チョークコイル

前回のブログで、タンゴの電源トランスME−275を測定しLTSpiceのモデルを作成しました。
今回は、チョークコイルを使った整流回路の動作をシミュレーションしたいと思います。
使用した電源トランスとチョークコイルの仕様は下記の通りです。


電源トランス(タンゴ ME275)
     320~280-0-70-280~320Vの320V巻線
       一次側直流抵抗  :  0.967Ω
       二次側直流抵抗  : 30.7Ω(外側)
                                    29.4Ω(内側)

       巻き数比             :  3.4
       インダクタンス      :  1.1H(一次側)
                                    12.7H(二次側)

チョークコイル(タンゴ MC-10-200D)

       巻線抵抗            : 95Ω
       インダクタンス      : 10H


下図はシミュレーション回路です。
コンデンサでチョークコイルを挟んだπ型フィルタを構成しています。コンデンサの容量は両方とも47μFです。チョークインプット型ではなく、コンデンサインプット型のはずです。



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下の写真は実験風景です。10数年前に製作したEL34アンプの残骸で実験しています。一次側はスライダックを使って電圧調整しています。



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下図左は整流後電圧のシミュレーション結果、下図右は実測波形です。一次側電圧は、部品選択の制限があるため定格半分の50Vにしています。シミュレーションと実測の波形、ほとんど同じ結果となりました。



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ここ結果で注意しなければいけないのは、出力電圧が振動していて安定するまでに時間がかかるということと、その振動電圧のピーク値が330Vとかなり大きいということです。入力電圧が定格の100Vの時には660Vとなりますから、コンデンサの耐電圧が気になります。


おそらく、整流管を使えば整流電圧の立ち上がりを遅くして振動を小さくすることができるので、この現象による弊害を回避することが可能だと思います。ダイオード整流では、負荷である出力管が暖かくなる前に電圧が立ち上がってしまいますから、この現象から逃れることはできません。



そこで、出力側のコンデンサ値を47μFから1000μFまで変化させてシミュレーションしてみました。



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シミュレーション結果ですが、左は出力電圧で右はチョークコイルを流れる電流です。この結果から、出力側のコンデンサ値を470μFにすると振動が収まることが分かりました。しかし、その時にコイルを流れる電流のピーク値は730mAに達しています。一次側の電圧を定格の100Vにすると倍近くの電流が流れます。MC-10-200Dの電流最大値は260mAとなっているため、普通に考えるとコアが飽和してもっと大きな電流(計算では4Aほど)が流れると予想されます。


ここまではほとんど無負荷で見てきましたが、下図は100mAの負荷をとった時のシミュレーション結果です。振動は少し収まるようです。



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肝心のリップル電圧ですが、シミュレーションでは以下のようになりました。チョークコイルの効果は大きいです。

47μF                                 :    10000mVp-p
470μF                                :     1600mVp-p
4700μF                              :       180mVp-p
47μF+MC-10-200D+47μF    :        60mVp-p
47μF+MC-10-200D+470μF  :          6mVp-p


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