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2016年8月

2016/08/30

KT88プッシュプルアンプ 調整と測定(3)

(Ⅲ)発振対策


(ⅰ)初めの状況
下図の定数で約20dBのNFBをかけました。アンプの入力をグランドに落とし、出力に4Ωの抵抗負荷を接続してあります。
Kt88nf01


電源を入れると、振幅数百mVで3MHz前後のきれいな正弦波が出力に現れました。
発振しています!




(ⅱ)出力段の高域を抑える
調査のためNFBを外し、測定範囲を10MHzまで拡大してアンプの周波数特性を測定した結果が下図です。ゲイン0dBと周波数1MHzのところに緑色の線を入れてあります。
Photo


気になったのは1MHz以上の特性です。信号レベルが低く測定限界に近いということもあるのですが、一旦ゼロ(1倍)を切ったゲインが再びプラスに転じています。ここに原因の一つがあるのではと考えました。
対策としてアンプ出力に抵抗とコンデンサを直列接続したダンパ回路を接続することにしました。
(多極管アンプの容量性負荷対策としてお馴染みのものです)
Kt88nf02_2


6.8Ωと220nFの組み合わせで何とかゼロを切ることができました。
Photo_2




(ⅲ)電圧増幅初段の高域を抑える
次に、アンプ出力をβ回路を介して受けている電圧増幅初段に注目しました。初段の周波数特性が”良すぎる”ことが原因ではないか考えたのです。下図は初段の回路構成です。
Photo_3


オペアンプにはAD797を使い、マイナス端子と出力の間に入っているコンデンサの容量は22pFでした。
この時の初段の周波数特性が下図です。出力は1Vrms、−3dBのカットオフ周波数は2.8MHzです。
Frad797_22p1vrms


マイナス端子と出力の間に入れているコンデンサの容量を100pFに増やした時の周波数特性が下図になります。−3dBカットオフ周波数は1.6MHzまで下がりました。
Frad797_100p1vrms


前記のダンパ回路追加とAD797マイナス端子と出力の間に入っているコンデンサ値を100pFに変更することとで、何とか3MHzの発振を止めることができました。


マイナス端子と出力の間に入れているコンデンサを外し、オペアンプをOPA627に変更しても同等の効果が得られました。下図は、この時の初段周波数特性になります。カットオフ周波数は1.2MHzでした。
Fropa627_0p1vrms




NFB回路の中心であるβ回路にコンデンサを入れ微分補償を行っています。しかし、微分補償は位相の回転を遅らせると同時に高域のゲインを上げてしまいます。補償コンデンサの値を大きくしていくと今回の現象が悪化することが確認されました。


2016/08/26

KT88プッシュプルアンプ 調整と測定(2)

(Ⅱ)測定結果(NFなし)


(ⅰ)入出力特性
ゲインは、Tube1&2が54.5倍(34.7dB)、Tube3&4が49.5倍(33.9dB)でした。歪を無視すれば60Wの最大出力が得られています。しかし、大出力時は小出力時と比較してゲインが6%程度大きくなります。NFなしでは当然ですが、リニアリティがないということがわかります。

Nf






(ⅱ)ダンピングファクタ
1を少し下回る値になっています。UL接続の5極管なので仕方ありません、NFに期待です。

Df






(ⅲ)歪率
Tube1、2の組み合わせの方が少しだけ良い値です。NFなしでも優秀な特性だと思います。

Thdn

Thd






(ⅳ)周波数特性
電圧増幅段の周波数特性がとても良いので、下記の特性はKT88プラス出力トランスのものと考えて良いです(実質トランスの特性です)。−3dBのカットオフ周波数は、Tube1&2が120KHz、Tube3&4が140KHzでした。

Fr12



Fr34






2016/08/23

KT88プッシュプルアンプ 調整と測定

(Ⅰ)調整
(ⅰ) 電源部
一次側の配線と二次側の整流回路までの配線を済ませてAC100Vを接続し、整流後の電圧が電源トランスの定格電圧の1.4倍前後が出ていることを確認します。


次に安定化電源を一つずつ確認していきます。所定の電圧になるように半固定抵抗を調整しますが、私はデバッグがすべて終わった時点で固定抵抗に置き換えることにしています。今回、電源部に使っている半固定抵抗7個のうち1個にトラブルが発生しびっくりしました。半固定抵抗は機械的な接点がありますから、製造時点で問題なくても流通や保管で不具合品に変化する可能性も有り厄介な代物です。



Photo



 写真に写っているデジタルマルチメーターはキーサイト・テクノロジー社(旧ヒューレッドパッカード社)の34461Aです。

これまでケースレー社(現在はテクトロニクス社に吸収されている)の2100を使っていたのですが、電源を入れると10分間ほどエラー表示が出て測定できないというトラブルが発生しました。修理費用をホームページで確認したところ、故障内容に関わらず一律八万数千円で、補償期間5年をすぎている個体はプラスアルファが請求されるとのことでした。送料や税金を加えると十万円を越える可能性もあります。因みに、この測定器は8年前に当時のケースレー日本法人から直接購入したものです。

資産管理している組織で税金のメリットがあるのなら修理しますが、個人の場合は購入金額を上回る修理費用を今更支払うのは馬鹿馬鹿しいと思いますよね。ということで、34461Aの購入に至りました。オシロのテクトロ、マルチメータのHPというのは測定器界のブランドです。手に入れられてとても嬉しいです。



(ⅱ) アンプ部
電源を入れる前に、電源とグランド間にテスターを当て異常な抵抗値を示していないかを確認します。電源を入れたならば、素早く各部の電圧を確認します。半固定抵抗を回してバイアス電圧が変化するかを確認し、プレート電流が小さくなる方に半固定抵抗を回しておきます。
次に、発振器を入力につなぎ電圧増幅段の動作を確認します。ゲインが計算通りか、周波数特性がシミュレーション通りかまでチェックできれば完璧です。


Photo_2




プリント基板をアンプケースに組み付け配線を済ませます。テスターを2本の真空管のカソード抵抗それぞれに接続し、電源を入れてバイアス電流調整を行います。今回は少し多めで65mAにしました。電源を投入して10分ぐらいで安定します。


Photo_3




(Ⅱ)測定(NFBなし)
NFBなしの状態で一通りの測定を行います。測定項目は、歪率特性、周波数特性、入出力特性、ダンピングファクタ等です。


Photo_4



2016/08/19

KT88プッシュプルアンプ 組み立て(アンプ部3)

配線作業に入ります。



01
ケースを組み立てた後は半田ごてが入りません。予めサイドパネルに線材を半田付けしていきます。線材の長さは適当です。






02
ケースを組み立てます。天板はサイドパネルにはめ込みです。サイドパネル間をねじで止めていきます。






03
内部シャーシを取り付けます。






04
まずヒータ周りの配線を行います。






05
出力トランス周りの配線を行います。






06
真空管周りの抵抗を半田付けした後、プリント基板の端子台へ線材を接続(ねじ止め)して配線終了です。



2016/08/16

KT88プッシュプルアンプ 組み立て(アンプ部2)

アンプケースに部品を取り付けていきます。


サイドパネルにRCA入力コネクタ、スピーカーターミナル X3、±75V&±15Vコネクタ、+465Vコネクタ、ヒータ電源コネクタを取り付けます。
01






仮組みです。
02






内部シャーシに真空管のコネクタと端子盤を取り付けます。
03






内部シャーシとプリント基板を取り付け、干渉しているところがないか確認します。
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出力トランスの出番です。
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天板に出力トランスを取り付けます。
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2016/08/12

KT88プッシュプルアンプ 組み立て(アンプ部)

タカチのFC(FCS)シリーズはサイドパネルの内側にレールが切ってあります。これにナットホルダーとナットをはめ込み、固定用板金をねじ止めしてシャーシやプリント基板を固定する為のベースを設けることができます。ケース外部にネジが出ないので、スマートな外見が実現できます。



ナットホルダーとナット、固定用板金、ネジの4点セットです。専用のシャーシには必要個数付属していますが、プリント基板用に別途購入しました。10セット入りで¥1110(定価)です。
01






ナットホルダーにナットをはめ込んだところです。
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ナットの入ったナットホルダーをレールにはめ込みます。
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固定用金具をねじ止めします。
04






アンプケースのサイドパネルに合計8個の固定用金具を取り付けます。プリント基板はスペーサを使って少し浮かせることにしました。
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2016/08/09

KT88プッシュプルアンプ 組み立て(電源部)

電源ケースへ部品を組み付けます。

前パネルです。スイッチとランプを取り付けます。
01




後パネルです。左からACインレット、ヒータ電源コネクタ X2、+465Vコネクタ X2、±75V&±15Vコネクタ X2を取り付けます。
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サイドパネルに±75V安定化基板と±15V安定化基板を取り付けます。
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もう一方のサイドパネルには、+465V整流コンデンサの電荷を放電するためのメタルクラッド抵抗とバイアス用の+55V安定化基板を取り付けます。
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トランスを除くすべての部品を取り付けたところです。
Photo





配線途中の写真です。
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2016/08/05

KT88プッシュプルアンプ 組み立て(プリント基板2)

絶縁シートですが、TO220やTO3Pのような定型サイズはネジやワッシャとセットにして販売されています。今回の使用したLM49810のような素子は自分で製作することになります。
下の写真は用具一式です。絶縁シートは信越化学のTC30AG1/8です。250mmX160mm、厚さ0.3mmでマルツ電波から購入しました。写真右の穴あけパンチはPOLARIS 3454です。M3のネジを通すのに最適な3.2mmの刃が用意されています。東急ハンズで購入しました。


Pt01







LM49810用のシートを4枚作成しました。穴あけのセンター位置がつかみづらく失敗作の方が多かったです。
Pt02





半田付けが終了したアンプ基板です。
Pt03






オペアンプ用電源の整流基板です。
Pt04






±15V安定化基板です。
Pt05






+465V安定化基板です。
Pt06







2016/08/02

KT88プッシュプルアンプ 組み立て(プリント基板)

プリント基板に部品を挿入して半田付けします。

工具一式です
01






部品のリードは治具を使って曲げます。使っているのはサンハヤトのリードベンダーRB−5です。
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整流基板に半田付けしています。コテ先を部品のリードと基板のランドとの両方に当て、十分に熱したところでハンダを流し込みます。
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半田付けが終わりました。フラックスで汚れています。
04







洗浄剤を使ってフラックスを除去します。フラックスを除去した後の整流基板です。
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洗浄には写真中央の太洋電機産業(goot)のBS−R20Bを使いました。現在は販売終了になっていて、代替品はBS-W20Bです。
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正直言って、代替え品はダメダメです。フラックスを少し柔らかくする程度の効能しかなく、洗浄剤とは言えないような気がします。主な成分は下記の通りです。

 BS−R20B : イソプロピルアルコール/トルエン/キシレン
 BS-W20B : メタノール/酢酸エチル/メチルエチルケトン

現在、一般人が購入できる洗浄剤の主成分はアルコールなので洗浄能力はとても低いです。別の用途に悪用する輩がいるので規制が入ったのか、人体への影響を考慮したのかは分かりません。
今後ですが、活性度の低いRMAタイプのヤニ入りハンダを使用し、見栄えが悪いのは我慢して無洗浄とするのが良いのかもしれません。能力の低いアルコール系の洗浄剤を使うと、かえって基板表面が汚くなってしまいます。





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