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2016/05/13

KT88プッシュプルアンプ 電源の設計(2)

(Ⅱ)必要電流の見積もり
まずB電源に必要な電流を見積もります。二通りで考えてみます。


(1)動作例から計算する
データシートに掲載されているUL固定バイアス、電源電圧460Vの動作例を参考にします。最大出力が70Wと少し大きく見積もられていますが、この時のプレート電流+スクリーン電流は、KT88一本当たり140mAと記載されています。従って、ステレオの片チャンネルで280mAが電源から供給する電流となります。

(2)Ep−Ip曲線から計算する
電力増幅段の設計でロードラインを引き最大出力を計算しました。その値は65.9Wです。この値は、スピーカへ送られる電力と出力トランスの電力ロスとの和であると考えられます。電源電圧が465Vですから、電流は65.9W/465V=142mAとなります。アイドリング電流は、プレート電流とスクリーン電流を合わせ65mA×2=130mAなので、電源から供給する片チャンネルの電流は142mA+130mA=272mAとなります。
 最大出力時のプレート電流はアイドリング時からそれほど増加しませんが、スクリーン電流はかなり増加します。スクリーン電流の増加分を考えると、電源電流は272mAより大きくなります。


両チャンネルとも最大出力というのはプロ用機器でもない限り有りえません。家庭用で使うならば、片チャンネルは最大出力、もう片チャンネルはアイドリング状態で電源電流を計算するのが良いと思います。参考文献にも同様のことが書かれています。
以上の考察から、アンプに必要なB電源の電流は、280mA+130mA=410mAとします。




次に電圧増幅段に必要な電流を見積もります。

(1)+75V
 LME49810  :   11mA  X 4 = 44mA

(2)-75V
 LME49810  :   13mA  X 4 = 52mA

(3)+15V                  
  OPA627    :   7 mA  X 2 = 14  mA
  OPA604    :   5.3mA X 4 = 21.2mA
  AD797     :   8.2mA X 4 = 32.8mA
  BIAS      :   5.3mA X 4 = 21.2mA
---------------------------------------
                            89.2mA

(4)-15V                  
  OPA627    :   7 mA  X 2 = 14  mA
  OPA604    :   5.3mA X 4 = 21.2mA
  AD797     :   8.2mA X 4 = 32.8mA
---------------------------------------
                            68  mA


                      

ヒータは、KT88一本で6.3V1.6Aとなっています。



(Ⅲ)トランス
 トランスは、EL84アンプと同じ株式会社フェニックスのRコアトランスを使用しました。
製作したトランスの仕様は下記の通りです。求めた必要電流より余裕をもたせました。


Kt88



 B電源を整流回路を含めシミュレーションしました。



Power01


Power02



 整流後の電圧ですが、負荷260mAで510V、負荷410mAで497Vとなりました。また、トランスの電流は、負荷260mAで581mArms、負荷410mAで850mArmsと仕様の範囲内に収まると値となっています。


電圧増幅段用の電源をシミュレーションした結果は下記です。


Power03


Power04


 整流後の電圧は、プラス側が+86.3V、マイナス側が-86.7Vとなりました。トランス出力電流は、負荷の大きいプラス側で294mArmsとなり仕様の範囲内であることが確認できました。



参考文献:
  黒川達夫、現代真空管アンプ25選、誠文堂新光社、p.120−121



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