KT88プッシュプルアンプ 電圧増幅段の設計
電圧増幅段は、EL84の時と同様にインスツルメンテーションアンプ(Instrumentation Amplifier)で構成します。
差動増幅器は同相信号除去比(Common Mode Rejection Ratio、CMR)が大きいということを特長にしていますが、その値は使う抵抗の影響を受けてしまいます。また、入力インピーダンスも同様に使う抵抗の影響を受けてしまいます。この課題を解決するのがインスツルメンテーションアンプです。さらに、抵抗1本でゲインを変えることができて設計が容易なことも特徴の一つです。インスツルメンテーションアンプは計装アンプとして使われることが多く、専用のICも多く製品化されています。オーディオ分野では、以前からマイクアンプによく使われていました。アキュフェーズがパワーアンプに使っていることをご存知の方も多いと思います。
真空管パワーアンプの初段には音声信号入力のプラス端子とNFB信号入力のマイナス端子が必要ですが、それら端子はともに高い入力インピーダンスを持っていることが理想です。さらに、プシュプルアンプでは電力増幅段に対して位相が180度異なる2つの信号を用意する必要があります。これら求められる要件は全てインスツルメンテーションアンプが解決してくれます。
EL84プッシュの時と構成は同じです。計算式を再掲載します。
電力増幅段の設計において、電圧増幅段に求められるゲインは41.6dBであると計算されています。1段目にはAnalog DevicesのAD797を2段目にはTIのLME49810を使用し、ゲイン配分を下記の通りとします。
1段目:R1=100Ω、R2=R3=560Ω → ゲイン:21.7dB(12.2倍)
2段目:Ra=1.5kΩ、Rb=15KΩ → ゲイン:20dB(10倍)
参考文献:
岡村廸夫、定本 OPアンプ回路の設計、CQ出版、p.226−229
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