コンテンツ

« 2016年2月 | トップページ | 2016年4月 »

2016年3月

2016/03/29

KT88プッシュプルアンプ 電力増幅段の設計(2)

 最大出力を見積もります。KT88にはウルトラリニア接続時のEp−Ip曲線が用意されていますからこれを使います。


 まず、アイドリング時のプレート電流を決めます。先輩諸氏の製作例では50mAから60mAに設定されていることが多いようです。今回は少し多めで60mAにします。プレート損失は、出力トランスとカソード抵抗のドロップを無視して計算すると、465V × 60mA = 27.9W になります。最大定格35Wの約80%です。最大出力は50W程度まで下がると思いますが、電源電圧を450V、プレート電流を50mAまで低くすれば最大定格の64%という数字になります。出力トランスは5KΩ仕様です。これらの条件でロードラインを引き最大出力を求めます。


Epip



Kt88



 最大出力は65.9Wと計算されましたが、実際に得られる値は出力トランスの効率次第です。おそらく、ギリギリ60Wが得られるかどうかだと思います。ただ、最大出力の定義をどうするかで値は変わってきます。



参考文献:
  黒川達夫、現代真空管アンプ25選、誠文堂新光社、p.45−55
  那須好男、KT−88プッシュプル・モノ・アンプの製作、アイエー出版「ラジオ技術」、2004年4月号、p.11−21



2016/03/26

北陸オーディオショウ

 今日、富山市で開催されている北陸オーディオショウに行ってきました。


Photo



 会場は富山城隣の富山国際会議場です。初めて入りました。



Photo_2





 デモと展示は2階の会議室で行われていました。入場は無料ですが、受付で簡単なパンフレットがもらえます。
201会議室〜203会議室はパーティションを使って2つに区切ってデモを行っていました。
204会議室は映像系の展示です。
206会議室はアキュフェーズが、応接室はIOデータが1社で独占して使っていて、
特別会議室はライブ演奏とマランツ/B&Wのデモでした。


 入場無料ということで子供を連れた夫婦や若いカップルも多くいましたが、真剣に聞き入っているのは年配の方だったように思います。北陸はオーディオのお店が少ない"過疎地"なので、内外の色んな機器を見たり聞いたりする機会が少ないです。このような催しは大変刺激になります。

 多くの方がB&Wの800D3シリーズに関心を持っていたようで、デモを行っていた特別会議室は立ち見も出る大盛況でした。私も聴きました。勿論悪いはずないのですが、どのくらい良いのかが聞ける環境ではなかったです。

 健闘していたのはTAOCのスピーカーFC4500だったように思います。おそらくエッジの効いた音なので、あのSNの悪い環境でも自己主張できたのではないでしょうか。

 4Kのプロジェクター映像も見ることができました。シネコンよりも解像感がありビックリしました。しかし、シャープネス効かせすぎで不自然な映像だったように感じたのは私だけ?。



Photo_3

2016/03/22

KT88プッシュプルアンプ 電力増幅段の設計

 EL84アンプの時と同じように、メーカー発表のデータシートをもとに設計を進めていきます。三極管接続とウルトラリニア接続の動作例を下記にまとめました。



Kt88_05


 音質面を重視するなら三極管接続に傾きそうですが、今回は60Wの大型トランスを奮発することもあり、出力狙いでウルトラリニア接続を採用します。KT88のデータシートを見るとウルトラリニア接続に関する記述が多いことに気づきます。なんと、UL接続のEp−Ip曲線まで掲載されています。ありがたく使わせていただきたいと思います。

 上記表の中で、UL固定バイアス、電源電圧460Vの動作例で考えていきたいと思います。ただ、先輩諸氏の製作例から推測すると70Wの出力は難しいのではないかと予想しています。

 電力増幅段の回路構成を下記に示します。



Photo


 電源電圧は動作例より少し大きめにして、Eb=465Vとしました。電力増幅段の電源ですが、他回路の電源とアイソレーションした上で、リターンの電位を他回路のグランドに対して55V〜60Vバイアスします。これにより、グリッドの電位はカソードの電位に対して55V〜60V低くなり、電圧増幅段との直結が容易になります。

 カソードにつながる10Ωとスクリーンに入っている100Ωは電流モニター用です。グリッドに入っている1kΩは発振防止用です。グリッド抵抗47KΩは、前段のLME49810のドライブ能力が高いのでもっと小さな値でも良いと思います。

 次に電力増幅段のゲインを計算し、電圧増幅段に必要とされるゲインを見積もります。



Kt88_2


 上記は4Ωで計算してありますが、8Ωでは0.587倍、16Ωでは0.83倍となります。ラジオ技術2004年4月号の那須好男氏の記事の中に、GEC球の実測値として8Ωまでが0.547倍、16Ωまでが0.775倍という記載があります。データシートの動作例を基にした値は那須氏の記事より7%ほど大きくなりますが、良い線いっているのではないかと思います。

 


参考文献:
  誠文堂新光社「世界の真空管カタログ」
  那須好男、KT−88プッシュプル・モノ・アンプの製作、アイエー出版「ラジオ技術」、2004年4月号、p.11−21


2016/03/15

KT88プッシュプルアンプ 構想と仕様(2)

設計の方向です。

(1)出力段
三極管接続で60Wの出力を得ることは無理なのでUL接続とします。ダンピングファクタの目標は15以上なので高NFアンプとなりますが、そのためには特性の良い出力トランスが必要です。今回は奮発して橋本電気のHW−60−5を採用しました。しかし、性能の良いトランスがNFBの足を引っ張ることになるとは気が付きませんでした.....。


_02




(2)電圧増幅段
KT88のバイアス電圧は−50V〜−60Vになると予想されます。ピークtoピーク120Vでドライブするのは真空管でも半導体でも容易ではありません。今回は、5年ほど前に半導体アンプを製作した際に目をつけていたTI社のLME49810を使用します。この石はバイポーラプッシュプルアンプのドライバーとして開発されたものです。ところが、データシートをよく見ると特性グラフにはパワーアンプ完成体としてのものではなく、LME49810単体を電圧増幅器として使用した時のものが掲載されています。さらに、単体でのゲイン/位相周波数特性まで示されているではありませんか。ということは、この石は高電圧オペアンプとして使用できる可能性がある、というか使用できるということです。電源電圧は最大で±100Vもあり、出力として190Vp−pを得ることができます。真空管アンプのドライブ用としてぴったりです。



Lme49810




(3)電源回路
ヒータ以外のオペアンプ用の電源とB電源を安定化します。トランスは株式会社フェニックスのRコアトランスを使うことにします。

(4)実装構造
トランスの重量が大きく持ち運びに難儀するのでアンプ部はモノラル構成です。電源部も別筐体にします。配線は、真空管の周りを除きプリント基板を使うことにします。






2016/03/08

KT88プッシュプルアンプ 構想と仕様

 中学生の頃の参考書は専ら「初歩のラジオ」でした。時期と内容ははっきりしないのですが、中学生が森川忠勇氏の指導を受けてKT88プッッシュプルアンプを製作するという記事が掲載されました。とても羨ましかったのを覚えています。いつの日にか私もKT88アンプを作ってみたいと思いました。


 社会人になってから知人にそのことを話したところ、その知人はアンプ製作とは無縁だったにもかかわらずGECブランドのKT88を持っていて、使わないからとタダでゆずってくれました。そこまでは良かったのですが、ゲッターがほとんど飛んでいて使い物になりませんでした。もちろん使えなかったとは言えませんでした。その知人は真空管の知識がない方だったので仕方ありませんね。


Kt88_08



 初めてKT88アンプを製作したのは20年ほど前です。中国からGolden Dragon KT88 Classicという本物そっくりの球が出たことを知り、早速購入し出力が30W程度のULプッシュプルアンプを製作しました。当時使用していたアキュフェーズのP-266と聴き比べたのですが、良い印象が無かった記憶があります。私の腕が悪かったのだと思います。


Kt88_07



 KT88の歴史と現行ロシア管について、2015年のラジオ技術1月号と2月号に都来往人氏が詳述されています。読み物として大変面白いのですが、技術史資料としても一流の内容です。


Kt88_05



 KT88は6550をベースに開発され、1956年に発表されました。今年で60年となります。開発と製造は、MarconiとOsramの合弁会社M-O.Valveです。販売ブランドはGEC、Genalex、Gold-Lion等々、色々あります。1988年まで製造が行われていたということなので、高価ではありますが未だ時々市場に出てくるようです。


 現行品ですが、スロバキア(JJ)製とロシア(Reflector工場)製の2つに絞られます。現行のGold-Lion、Mullard、Electro-Harmonix、Sovtek等々のブランドは全てReflector工場で作られているようです。Svetlana工場製は現在入手できません。




 KT88はプレート最大電圧が800V、プレート最大損失40Wの大型管です。電源電圧560VのUL接続で100Wが得られるとデータシートに記載されています。今回そこまで頑張ることはせず、製作例の多い出力50W〜60Wを目標に設計しようと思います。

今回製作するアンプの目標仕様です。
   最大出力      : 60W
   歪率        : 1%以下(50W出力時)
   増幅度       : 14dB(5倍)/4Ω
   周波数特性     : 10〜100KHz(−3dB)
   ダンピングファクタ : 15以上
   残留雑音      : 0.2mV以下





参考文献:
  都来往人、ロシア製Mullard KT-88復刻版(前編)、アイエー出版「ラジオ技術」、2015年1月号、p.45−62
  都来往人、ロシア製Mullard KT-88復刻版(後編)、アイエー出版「ラジオ技術」、2015年2月号、p.37−56
  誠文堂新光社「世界の真空管カタログ」



2016/03/05

KT88プッシュプルアンプ はじめに

 KT88を使用したプッシュプルアンプを製作しましたので、これから何回かに分けて紹介したいと思います。


Kt88_03



 今回も出力段以外は半導体のハイブリイドタイプです。EL84プッシュプルアンプではOPA604でグリッドをドライブしましたが、KT88ではLME49810を使用します。回路の概略は下記の通りです。


Kt88ulpp_schematic

« 2016年2月 | トップページ | 2016年4月 »