EL84ppアンプ 電源の設計(2)
(Ⅱ)B電源
ラジオ技術2007年6月号に、佐藤荘太郎氏が書かれた「汎用3端子レギュレータLM317を使って管球アンプ用高圧定電圧電源を作る」という記事が載っています。当時、EL34パワーアンプを製作していて、これは良いと思い早速使ってみました。記事にある通り温度に対する安定度は今ひとつでしたが、真空管アンプに使うには十分だったと記憶しています。今回は、この3端子レギュレータを応用した安定化電源を採用することにします。
この安定化電源は、NS社がTI社に買収される前の1980年にMichael Maida氏が発表しています。海外ではmaida regulatorとして有名な回路だそうで、今でもTI社のホームページで源資料を見ることができます。
この回路の基本動作を下記に示します。
シミュレーション結果を下記に示します。LTSpiceには317のモデルが用意されています。ただし、LM317という名称ではなくリニアテクノロジー社の型格LT317Aという名称です。SCT2450KEのモデルはロームのホームページからダウンロードしましたが、デバイスモデルではなくマクロモデルでした。シミュレーションを行うと収束しないことが多く、LTSpiceで用意されていたデバイスモデルSTP8NM60で代用することにしました。今回の目的では結果に大きな差は生じません。
安定化電源の入力と出力 LM317の出力と入力、FETのソースとゲート
317のADJ端子に220Ωを介して接続されている1μFは、電源の立ち上がり速度を遅くする(所謂ソフトスタート)働きがあります。R11(150kΩ)は、317が負荷電流3.5mA以上を推奨しているため入れてあります。電圧設定抵抗R7とR8と合わせて3.5mAです。シミュレーションでは必要ないと思いますが、ゲート抵抗R5は発振防止用です。
本回路では240mA負荷の条件で、488ms後に70%まで立ち上がり、1.8s後に100%となります。各部の電圧は、Voutが300.1V、317の入力が303.6V、FETのソースが306.1V、FETのゲートが312Vとなりました。
参考文献:
佐藤荘太郎、汎用3端子レギュレータLM317を使って管球アンプ用高圧定電圧電源を作る、アイエー出版「ラジオ技術」、2007年6月号、p.57−62
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