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2015/10/27

EL84ppアンプ 試作実験(5)

(Ⅳ)最大出力と歪率
 下記は歪率のグラフです。バラックでの測定だったのでTHD+Nはボロボロでした。載せるに値せずということでTHDのグラフだけです。ちゃんと組んだら再測定したいと思います。
 最大出力は15Wまで伸びますが、歪率1%以下を判断基準にするならば13Wになります。出力トランスのインピーダンスを下げ、オペアンプの能力をフルに使ったAB2級にすれば最大出力はもっと伸びると思いますが、今回はこれでよしとします。


Thd



(Ⅴ)NFBと位相補償
 回路が2次の特性であれば最適なスタガ比や位相補償量を計算することができるだろうと思いますが、実際の回路は複雑な特性を示すので一筋縄では行きません。その原因の多くは出力トランスにあります。今回使用したノグチのPMF−28P−8Kは130KHz〜140KHzの間にゲインが盛り上がるピークを持っています。このようなピークはNFBをかけた時の安定性に影響を与えると考えられます。しかし、今回ぐらいのNFB量(−12dB)であれば適切な位相補償を行うことで問題なく使用できることが実験で確認できました。


 実際の位相補償ですが、出力トランスに接続されているβ回路の抵抗1KΩにコンデンサを並列接続して微分補償を行います。β回路に並列接続するコンデンサの容量を変化させた時の周波数特性と10KHzステップ応答特性を下記に示します。
 また、アンプの負荷を容量性にすると発振しますから、この対策としてトランス出力とグランド間にRC直列回路を入れます。値は10Ωと0.22μFとしています。



330pf_2

      位相補償コンデンサ:330pF

680pf_2

      位相補償コンデンサ:680pF


1000pf_2

      位相補償コンデンサ:1000pF

 

 ここから分かるのは、10KHz矩形波の立上りオーバーシュートは、周波数特性に現れる130KHz〜140KHzのピークが原因であるということです。電圧増幅段と電力増幅段のスタガ比は十分にとっていますから、電力増幅段の周波数特性が1次に近いゆるやかな減衰特性を持っているならば矩形波のオーバーシュートは発生しないはずです。
 付加するコンデンサ容量ですが、330pFでも発振せずに動作します。私はキッチリした波形が好きなので1000pFにしたいと思います。


(Ⅵ)その他
 Analog Discoveryを使ってステップ応答を見ていた時の話です。測定が終わってPC画面上でSTOPボタンをクリックしたところ、EL84のプレートがみるみる赤くなってくるではありませんか。あわてて電源スイッチをオフにしましたが、時すでに遅し...。EL84は天国行きとなりました。
 Analog Discoveryの発振器は、矩形波出力モードでSTOPボタンを押すと出力はゼロボルトになるのではなくHighかLowどちらかの電圧になるようです。今回のアンプは出力段のバイアスをDCアンプ構成の電圧増幅段で設定しているため、入力に入ったDC電圧が増幅されてそのまま球のグリッドに印加されるのです。電圧がマイナス方向であれば球はカットオフするので問題ありませんが、プッシュプルの反対側はプラス方向ですからとんでもないプレート電流が流れます。アンプの入力に直流分が入らないという保障はありません。余計なDC成分がグリッドに印加されないような工夫が必要であるということに気づかされました。そのような目でメーカー製アンプの回路図を見ると、ほとんどの製品の入力にRCハイパスフイルタ(DCカットフィルタ)が入っています。今回のアンプにも何らかの対策が必要です。
 

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