EL84ppアンプ 電圧増幅段の設計(4)
順序が逆になりましたが、オペアンプの電源電圧の設定をします。
U3及びU4の電源電圧は電力増幅段のグリッドをフルスイング出来るように値を決めるのが基本です。OPA604のデータシートによると、最大出力電圧は(片側電源電圧ー3V)になっています。OPA604の電源電圧最大値はプラスマイナス合わせて48Vですから振幅は42Vp−pとなり、EL84のグリッドをドライブするのに十分な能力を持っていることが分かります。
EL84の動作例ではバイアス電圧が−14.7Vの時、グリッド入力10Vrmsで最大出力が得られるとなっています。従って、マイナス側に関しては(ー14.7Vー14.1Vー3V=ー31.8V)の電源電圧があればよいことになります。これらの検討結果から、U1とU2(OPA134)は±15Vの電源電圧とし、U3とU4は+15Vと−32Vの電源電圧としました。
オペアンプを使った回路を設計する際に考慮しなければいけない大切な項目として入力バイアス電流と入力オフセット電圧があります。これらはオペアンプの出力に誤差として現れるので注意が必要です。初段に使うOPA134について見てみます。
入力バイアス電流は+5pA(typ.)、±100pA(max.)となっています。信号を受ける非反転入力端子に100KΩが入っていますから、抵抗に5pA×100KΩ=0.5μV(typ.)、100pA×100KΩ=10μV(max.)の電圧が発生します。非常に小さく無視してよい値です。
一方、入力オフセット電圧ですが、データシートでは±0.5mV(typ.)、±2mV(max.)となっています。電圧増幅段のゲインは8.4倍×8.2倍なので、U1とU2に逆相のオフセット電圧が発生すると考えて0.5mV×2×68.9倍=68.9mV(typ.)、2mV×2×68.9倍=276mV(max.)の出力誤差が予想されます。しかし、この程度の値であればバイアス電流調整回路で吸収できますから、オフセット調整回路の必要はありません。
バイポーラタイプのオペアンプはバイアス電流が大きいため入力抵抗を大きくできないという問題が発生します。そのため、初段の差動増幅回路にFETを使い他はバイポーラとなっている製品が多くあります。今回使用するOPA134もそのような製品の一つです。
NFBをかけるβ回路についてです。電圧増幅段+電力増幅段のゲインは36.8dBー3.2dBー1.7dB=31.9dB(39.4倍)と見積もられています。仕上がりゲインを20dB(10倍)に設定すると、10=39.4÷(1+39.4β)からβ=0.075と計算できます。この計算結果から、β回路は1KΩと82Ωを組み合わせて構成することとしました。帰還量はちょうど12dBになります。
電圧増幅段と電力増幅段を合わせた回路図は下記の通りになります。