EL84ppアンプ 電力増幅段の設計(2)
出力目標が15WでUL接続ですから、動作モードはB級に近いAB級になります。データシートの動作例を基本とし、スクリーン損失の様子を伺いながらアイドリング電流をもう少し増やした動作にします。最終的には実験で決めたいと思います。
動作例では、アイドリング時のプレート電流は7.5mAなのでプレート損失は2.25Wになり、最大規格の12Wより小さく全く心配しなくてよい値です。出力トランスのインピーダンスも動作例通り8KΩにしましたから、あとは最大出力の見積もりになります。しかしながら、EL84をUL接続したときのプレート特性図は発表されていません。スクリーングリッド電圧を変化させた時のプレート特性図があれば作図可能なのですが、それも発表されていません。下図は5極管接続のプレート特性図です。
こんな時に頼りとなるのは過去の製作記事です。今回は、ラジオ技術誌に発表されていた竹森幹郎氏の記事を参考にさせていただきました。武末数馬氏の名著も引用しながら、EL84(6BQ5)について詳細に説明されています。
UL接続に関して、以下のことが書かれています。
①最大出力の実測値は5極管接続に対して約15%低下する。
②最大出力の実測値はプレート特性図や理論計算式で求めた値より大きくなる
その理由は、スクリーングリッドが第二プレートとして働くためである
③電圧増幅度は5極管接続に対して3.2dB低下する
(前々回、紹介しました)
特に面白いのは②です。スクリーングリッドは出力トランスの43%巻線につながっていて入力波形に追従した電流が流れますから、第二プレートという考え方は当たっているのかもしれません。また、①の通りならば、データシートの5極管接続動作例では17Wが得られていますから、目標の15Wには届かないものの14Wぐらいはなんとかなりそうです。
参考文献:
竹森幹郎、6BQ5 AB2プッシュプル・パワー・アンプの製作(設計編)、アイエー出版「ラジオ技術」、2009年11月号、p.35−44
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