EL84ppアンプ 電圧増幅段の設計(2)
電圧増幅段には、電力増幅段をドライブするために必要なゲインを得ることと、電力増幅段に対して十分なスタガ比を持つこととが同時に求められます。
電圧増幅段に求められるゲインは概算で36.9dBです。必要なゲインが得られようにアンプ回路の素子と素子の値を按配していき、必要とする帯域を持っているか確認します。得られた周波数特性と出力トランスの周波数特性の比(−3dBカットオフ周波数の比)をスタガ比と考えます。今回のアンプは電圧増幅段をオペアンプを使ったDCアンプとし、これをカップリングコンデンサを介さずに出力段に直結しています。低域の時定数は出力トランスだけですから高域のみを考えればよいです。予定しているNFBは−12dB前後、スタガ比は10程度あればなんとかなるでしょう。ノグチトランスPMF−28P−8Kの高域特性は〜65kHz(−3dB)となっていますから、電圧増幅段には数百KHz中〜後半の周波数特性が求められます。
U1とU2で構成される1段目にOPA134を、U3とU4で構成される2段目にOPA604を使用することとします。オペアンプのデータシートには(オープンループゲイン/位相 対 周波数)のグラフとGB積(利得帯域積)の値が示されています。これらを用いて設計するアンプの周波数特性を把握し、1段目と2段目のゲイン配分を決めます。OPA134のGB積は8MHz、OPA604のGB積は20MHzとなっています。2段目に使うオペアンプのGB積が1段目より大きいので2段目のゲインの方を大きくしたいところですが、1段目のゲインは2つのオペアンプ出力の差動ゲインなので、オペアンプ1個あたりのゲインは約半分と考えられます。よって、1段目のゲインと2段目のゲインをだいたい同じになるよう設計しました。
1段目:R1=270Ω、R2=R3=1kΩ → ゲイン:18.5dB(8.4倍)
2段目:Ra=1kΩ、Rb=8.2KΩ → ゲイン:18.3dB(8.2倍)
使用したオペアンプのGB積から、−3dBのカットオフ周波数は1MHz前後になると見込まれす。設計した値で周波数特性がどうなるのか、LTSpiceを使ってシミュレーションしました。
シミュレーション結果ですが、ゲインは36.8dB(1KHz)、高域のカットオフ周波数は958KHz(−3dB)となりました。電力増幅段に対して十分なスタガ比が得られると見込まれます。
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